●一人の人間の弱さを知り、弱者の視点に学ぶ
私たちがいつも気を付けなければならないことは、「一人の人間は弱い」ということです。
社会や組織には、強い人もいますが、弱い人もいます。ふっと魔が差して、「あれ、この人がこんなことをする?」というような場面に立ち会ったことのある方もいらっしゃると思います。これが、一人の人間は弱いということです。
加えて、組織や企業の中には、仕事がテキパキできる人もいれば、少し時間がかかる人もいます。それが組織や企業というもので、みんながテキパキする企業など、気持ち悪くて近寄れないですね。しかも、仕事ができる・できないというのは、ほとんどが相対評価です。もちろん、中には絶対評価できるような職種もありますが、たいていは相対評価で、「あの人に比べてできない」わけですから、「できない」人10人を切り捨てたとしても、また「できない」人が生まれてしまうのです。
産業革命後の工業化社会は、企業の中でテキパキできる人がえらくて、そうでない人はダメだという評価で人の価値を測るようになりました。私は、これは非常に大きな罪だと思います。私たちは、人の価値を多面的に見なければなりません。そして、少し立ち止まって、弱い人や仕事ができない人、テキパキできない人の目線で組織や社会を見る。このことが非常に重要ではないかということを、私は多くの人たちから学びました。
●自己研鑽・自己革新に向かう二つのコツ
それを行うためには、自分自身が自己研鑽し、自己革新しなければなりません。そして、私たち自身が政策を立案していくことも非常に重要です。「政策を立案」というと大げさですが、自分の考えを明確に持つということです。
そのためには、自分自身に負荷を掛ける必要があります。筋肉でも、過度な負荷はダメージになるけれども、負荷を掛けなければ、なえていきます。入院した人は経験があると思いますが、1週間もベッドに寝ていたら、歩くためにはリハビリをしなければなりません。同様に私たちは、精神にも常に負荷を掛けておく必要があるのです。
私は自己研鑽や自己革新をするためには二つのポイントがあると思っています。一つは、異分野や異質から学ぶことです。違う分野で活躍している人、あるいは自分とは違う異質な人から学ぶわけです。同質の協力は足し算にしかならないけれど、異質の協力は掛け算になる可能性があると、昔の人は言っています。
二つ目のポイントは、一対一で対話をすること。できれば目上の人や自分よりポジションの高い人との対話が重要だと思います。そういう場面で、自分は何を彼に主張するか。彼から何を引き出すか。あるいは、その話を最後にはどのように持っていくか。これは、自分でイメージコントロールや予習をしなければなりません。非常に重要なことだと思います。
その代わり、自分の方がポジションが高く目上である場合の対話では、「目線を合わせる」ことも自覚しておかなければなりません。目線が違うと、対話にはなりません。
●意思決定のあり方とタイミングの重要性
さらに、私はタイミングが非常に重要だと思います。日常生活において、私たちは日々判断をしながら生きています。大きな物事を判断するためには、多くの人の意見を聞き、葛藤しながら行っています。ただ、考えてみると判断や意思決定は、自分が覚悟すればできます。しかし、その判断や意思決定をいつ行動に移すのか。あるいはリーダーであれば、その判断や意思決定をいつメンバーの人たちに伝えるのか。こうしたタイミングが非常に重要だと私は思うのです。
そのタイミングが早くても遅くても、さまざまなことに支障が起きる可能性が十分あります。私はこのタイミングをずっと見ながら、これまで活動や仕事や運動をしてきたといっても過言ではありません。
クリスチャンではない私が引用するのは非常に恐縮ですが、『旧約聖書』の「伝道の書」のチャプター3にこんな言葉があります。
「全てのことには季節があり、全てのわざにはときがある」と始まりますが、「こわすにときがあり、建てるにときがあり」「保つにときがあり、捨てるにときがあり」というように続いていきます。この「とき」は、まさにタイミングの重要性のことだと思います。
●行動・実践・アクションとサムシング・ニュー
最後に、やはり行動、アクションを起こすことです。
今の時代を「無から有を生み出す時代」と私は呼んでいます。簡単にいえば、昔は目標を誰か決めてくれて、その目標にいかに到達するかを考えれば良かったのです。しかし、今は目標そのものを自分で考えなければならない時代に入っています。
そういう中で次のステージに向けた方向をどう付けていくかというと、トライ・アンド・エラー...