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企業の総合化がブランドの成功を妨げた

ブランド戦略論をどう読むか(7)総合化とブランド

田中洋
中央大学名誉教授
概要・テキスト
どうすれば、とらやのように400年以上続く老舗になることができるのか。昨今の日本企業の総合化は、ブランドにとってどのような影響をもたらすのか。中央大学ビジネススクール大学院戦略経営研究科教授の田中洋氏とジャーナリストでifs未来研究所所長の川島蓉子氏が大いに語り合う対談最終回。(全7話中第7話)
時間:08:32
収録日:2018/01/15
追加日:2018/04/12
タグ:
≪全文≫

●200年以上続いている長寿会社の半分以上が日本にある


川島 長続きさせていくためには、何が必要でしょうか。

田中 それは難しい問題です。とらやのように500年も続いているということは、大変なことです。私も長く続いている企業に関心があり、調べたことがあります。日本にはたくさんの老舗があります。200年以上続いている会社は、世界中で確か5,000件ほどあるのですが、そのうちの半分以上が実は日本にあるのです。

 しかもその内訳の多くは、とらやのようなお菓子屋さんと、宿屋、旅館なのです。酒屋さんもあります。クイズみたいで申し訳ありませんが、世界で一番古い温泉旅館はどこにあるかご存じですか。

川島 全く知りません。日本にあるのですか。意外と知られていないということですね。

田中 日本にあります。1300年ぐらい続いている旅館で、ギネス記録に認定されています。山梨県の、南アルプスの麓にある西山温泉慶雲館という旅館です。つまり、長く続いていても、とらやのように偉大なビッグブランドになっているケースと、全くそうではないケースがあるということです。


●時代に適応するかどうかは、経営者の才覚による


田中 ただし、それでも何百年も続くためにはある種の条件があります。それが、お菓子、酒屋、旅館という業種のようです。

川島 どうしてでしょうか。

田中 おそらくこうした業界に大きな変動がなかったからだと思います。

川島 業界としてのイノベーションがあったわけではないということですか。

田中 そうです。特に慶雲館の場合、駅から車で1時間以上かかる南アルプスの山中にあるのですが、もともとは長い間、農家の人の農繁期の疲れを取る宿でした。だからこそ、戦争の動乱などに煩わされずに済んだのです。また、温泉は自然に湧くものですから、原料費があまりかかりません。低コストで運営できるというのも要因の一つでしょう。例えば、現在のIT企業が1300年も続くなんていうことは、到底考えられません。

 ですから、長持ちするかどうかは、業界による効果が結構大きいのではないかと思っています。とはいえ、日本酒だってとらやだって、世間的、時代的な波には洗われてきたはずです。したがって、かなり単純化していえば、それは時代に適応したとしか言いようがありません。しかし、それだけで話が終わるとつまらないですから、どのように時...
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