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「起源の忘却」がブランドの成立にとって重要

ブランド戦略論をどう読むか(2)起源の忘却

田中洋
中央大学名誉教授
概要・テキスト
ブランドについて具体的に考えるためには、ブランドという言葉を使わずに議論すべきだと、中央大学ビジネススクール大学院戦略経営研究科教授の田中洋氏は提案する。田中氏によると、マクドナルドの成立の経緯から「起源の忘却」がブランドの成立にとって重要であるという。起源の忘却とは一体どういうことなのか。(全7話中第2話)
時間:08:10
収録日:2018/01/15
追加日:2018/03/30
≪全文≫

●ブランドという言葉をあえて使わない


 ブランドとは何かということを話し合うと、議論百出の状態になってしまいます。クイックアンサーの一つとしてお勧めできるのは、ブランドという言葉を使わないようにするということです。もちろん『ブランド戦略論』(有斐閣、2017年)の中では、この問題を扱ってはいるのですが、普通の人がブランドとは何かを話し始めると、それだけでややこしい議論になってしまいます。

 「ブランドとは何か」と問わず、例えば「自社の商品をどのように思われたいのか」と考えてみるのです。そうすれば、消費者には今このように思われているけれども、それをこういうふうに思われるようにしましょう、といった議論になるはずです。これはブランドでいうポジショニングという考え方ですが、それを平たく言ってみるのです。

 あるいは、インターナルブランディングということもよく言われています。会社の中の組織をブランドによってまとめるということです。この場合も、ブランドという言葉を使わずに、「社内の意識を統一して考えましょう」と言い換えることができます。このように、ブランドについて語るためには、ブランドという言葉をあえて使わずに議論した方がいいことがあります。


●はとバス「なら」できる、はとバスに「しか」できない


 例えば、はとバスという会社はご承知のように東京都内の観光を得意としていますが、一時期かなり低迷した時期がありました。そこでブランド活動を行い、乗客へのサービスのクオリティを向上させようとしました。しかしその際、ブランド活動とは言わずに、「ならしか運動」と言っていたのです。「ならしか運動」とは、もちろん奈良のシカではなく、はとバス「なら」できる、はとバスに「しか」できないことをしようというプロジェクトです。

 そうすると、はとバスの運転手やガイドさんが、「はとバスにしかできないこと、はとバスならできることをお客さんにすればいいのか、それは何だろう」と考え始めるわけです。これはブランドということを、ブランドという言葉を使わずに考えている例です。こうしたことを参考にしていただければと思います。


●ブランドは表層的であると同時に本質的でもある


 次にクイックアンサーの2つ目です。確かにある面で見ると、ブランドイメージという言葉があるように、中身は悪くてもイメージさえ良...
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