ブランド戦略論を考える
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セルフブランディングが得意だったシャネル
ブランド戦略論を考える(6)シャネル事例からの学び
田中洋(中央大学名誉教授)
ファッションブランドとして著名なシャネル。創業者ココ・シャネルの逸話をひもとき、二度の危機に見舞われながらも、シャネルがいかにしてブランドとして成功してきたのかを、中央大学大学院戦略経営研究科教授の田中洋氏が解説する。(2018年1月27日開催中央大学ビジネススクール/ビジネス戦略論最終日講義「『ブランド戦略論』をどう読むか」より、全7話中第6話)
時間:16分08秒
収録日:2018年1月27日
追加日:2018年8月15日
≪全文≫

●シャネルはなぜこれほどまでに成功したのか


 ここで、シャネルというファッションブランドを考えてみようと思います。シャネルはもともと、ココ・シャネルという女性のデザイナーによって立ち上げられたブランドです。

 シャネルは19世紀的な女性の服を20世紀的な形にしたといわれています。19世紀的な女性の服というと、例えば腕や袖をぎゅっと絞ったり、腰の周りを針金などでぎゅっと締め付けたりと、大変窮屈な服装でした。ココ・シャネルは、シャネルスーツに代表されるように、女性が働きやすい、もう少しゆったりした服を考えたのです。したがって、ココ・シャネルは、19世紀の窮屈な世界から女性を解放したと普通、理解されています。

 実際、シャネルは子どもの絵本にも取り上げられるように、女性の偉人の一人として見なされています。シャネルというブランドの創始者としてのみならず、過去50年間で最も大きな影響を与えたファッションデザイナーとも評価されています。ジュエリーやシャネルNo.5などのフレグランスも、非常に有名です。

 しかし、シャネルはなぜこれほどまでに成功したのでしょうか。彼女はかなり長生きでした。1883年に生まれて、1971年に87歳で亡くなっています。彼女の生涯は、非常に波乱に富んだものでした。


●シャネルは2度ほど、死んだも同然だった時期があった


 私の知る限り、シャネルというブランドは2度ほど、低調な時期がありました。1度目は、第2次世界大戦が終わった後の時期です。第2次世界大戦中、フランスのパリはドイツのアドルフ・ヒトラーによって占領され、蹂躙されていました。その時期、シャネルはヒトラー政権の軍部関係者の愛人だったといわれています。後年、実証的な暴露本が出ました。つまり、シャネルはナチスに協力していたとされているのです。

 そのため、終戦後、シャネルはスイスに逃がれます。戦争中にナチスに協力した人は、戦後、迫害されましたので、当然のことでした。女性は坊主にされて、街の人から石を投げられたという有名な写真があります。シャネルのような有名人が敵方のナチスの軍部の愛人だったというのは、本当に不名誉極まりない出来事だったのです。

 ですから彼女は、スイスに一時、亡命するように逃れていったのです。この時期は当然、パリにあるシャネルのメゾンは閉めてしまいましたし、シャネルブランドなどは見る影...

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