ブランド戦略論を考える
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ブランドの議論はブランドという言葉を使わずにすべき
ブランド戦略論を考える(7)ブランドを議論するために
田中洋(中央大学名誉教授)
中央大学大学院戦略経営研究科教授の田中洋氏が、一連の講義を振り返り、ブランドとは何か、ブランドは表層的かという問いに実践的なアドバイスを与える。ブランドを議論するためには、ブランドは表層的だという固定観念を捨て、ブランドという言葉を使わずに具体的に話し合った方がいい。(2018年1月27日開催中央大学ビジネススクール/ビジネス戦略論最終日講義「『ブランド戦略論』をどう読むか」より、全7話中第7話)
時間:7分25秒
収録日:2018年1月27日
追加日:2018年8月22日
≪全文≫

●ブランドという言葉を使わずに議論した方がいい


 最後に、この講義の最初に挙げた疑問に、クイックアンサーを与えておこうと思います。

 第1に、ブランドについて議論し始めると、議論が沸騰して、なかなか収拾がつかなくなってしまいます。そういう場合に、どうすればいいでしょうか。

 私の答えの一つは、ブランドという言葉を使わずに議論した方がいいというものです。ブランドについて話し合って大混乱が起きるのですから、その言葉を使うのをやめてしまえばいいわけです。

 その代わり、もっと具体的に議論しましょう。例えば、その商品をどう思ってもらいたいのか、あるいは社内が問題なのであれば、社内意識を統一するためにどうすればいいのかと議論すればいいのです。ブランドのロゴのデザインが悪いのであれば、ロゴのデザインをどう変えるか議論しましょう。できるだけブランドという言葉を使わずに、何か具体的な言葉やアクションに落として検討していくことをお勧めします。

 東京都内の観光バス会社に、はとバスがあります。はとバスは一時期、非常に業績が悪くなった時期がありました。そこで、何とかはとバスのブランドを良くしようということになりました。そのためには、はとバスの運転手やガイドの女性の意識を変える必要があります。

 そこで、「ならしか運動」を社内で開始したのです。つまり、はとバス「なら」できる、はとバス「しか」できないということを意識させる運動です。これに沿って、運転手からガイド、社員に至るまで、もう一度自分たちのブランドを考え直しました。これはブランド活動でありながら、それを具体的な社員の活動に置き換えた例です。


●ブランドは表層と実質の両方を意味している


 第2に、ブランドは表層的なのではないか、表層と本質は何がどう違うのかという問題です。これに対するクイックアンサーは、やはりブランドには表層的な部分もあるが、しかし本質的な部分もあるというものです。つまり、表層と本質の両方を持っているわけです。

 イノベーションにおける起源の忘却というお話をしましたが、それに即して考えてみましょう。ブランドが生まれたときには、やはり技術やイノベーションといった、ある意味で本質的な要素が非常に重要です。しかしその後、起源の忘却が起こり、本質的(実質的)な部分が忘れられ、名前が独り歩きするようにな...

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