●認知症の治療は、4つの薬を選択しながら使い分ける
認知症の治療についてお話をします。認知症はいろいろな病気から構成されていますが、現在治療薬があるのはアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)とレビー小体型認知症(レビー小体病)です。アルツハイマー型認知症が全体の約6割を占めるので、日本では1999年からアルツハイマー型認知症に対して4つの薬が使えるようになっています。現在はこれらを組み合わせ、上手に選択しながら使っていくことが求められています。
これらを早く使うことで、進行を遅らせて、安定した生活を送り、行動心理症など困った症状を減らすことができます。普通の加齢によるボケだと判断し、放置しないということがポイントです。一度は専門医にかかり、薬が必要かどうかを判断してもらい、生活上のアドバイスを聞くことが重要です。
この薬については、世界中でデータが集まっており、効果のエビデンスもあります。ですが、これによって完全に治るわけではなく、進行を1年から2年遅らせるというものです。ですがこの薬には、それだけにとどまらないメリットがあります。私も、もし認知症になったらこの薬を飲むことになるでしょう。副作用もありますが、飲んだ方が良いものです。
アルツハイマー型認知症にはガイドラインと呼ばれる、医者が参照する治療のためのお手本のようなものがあります。ガイドラインには薬に関しても記載があり、そこには4つの薬を上手に使うことと、それには根拠もあるということが書かれています。現在、世界中で何100万人もの方が、その治療のためにこの薬を服用しています。
4つの薬を具体的にいうと、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンというものです。最初の3つは同じタイプの薬で、アセチルコリンエステラーゼインヒビター(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)という作用があります。アルツハイマー型認知症においては、記憶の伝達物質であるアセチルコリンが減ります。そのためその分解酵素を阻害すると、アセチルコリンが少し増え、症状が緩和されます。その3つはアセチルコリンを増やすことで、記憶の疎通性を保とうとするものです。
その一方で、メマンチンはこれらとは違ったタイプで、神経細胞を保護し、神経のノ...