●人間関係を維持し、病状についての丁寧な説明を行うことが大事
認知症の人を支援する際に重要なのは、物忘れなどがあっても、なるべく趣味を続けるなどして、その人らしく暮らせるようにすることが重要です。例えば、動物療法は特に一人暮らしの男性に有効だといわれています。一人暮らしの男性は、閉じこもりになって友人が少なくなってしまう傾向にありますが、犬がいると散歩に行くので、そこで知り合いができます。また地域によっては、喫茶店にモーニングを食べに行くと、そこにグループができており、会話サロンになっているケースもあります。そうした際には、喫茶店に行くのも良いでしょう。
どうしても高齢になってくると、人間関係を閉じてしまい、外に出なくなりがちです。この点を意識して生活されると良いでしょう。一人暮らしの人であっても友人を作り、外へ出ていくことが大事です。
スライドの2つ目にあるように、物忘れを自覚するのには辛く、寂しさや辛さ、困難を伴います。その場合には、残された能力を伝えたり、本人の状況について病状説明を丁寧に行い、家族が寄り添っていることを説明すると良いでしょう。
●対応の仕方で一番重要なのはコミュニケーション技法
対応の仕方で一番重要なのは、コミュニケーション技法です。例えば、目をじっくりみる、ゆっくり声をかける、ゆっくり触る、抱っこして支える、などが挙げられます。要するに、言葉が通じず記憶がなくなっていても、「味方だよ」というメッセージを出して、相手の懐に入る、関係性を作ることが求められます。認知症の方と付き合っていくには、コミュニケーションを大事にすることがポイントなのです。家族の場合、怒ってしまうケースも多いのですが、怒っても始まらないので、絶対に怒ってはいけません。
また最近では、日本にも「認知症カフェ」が増え、全国で数1000軒あります。そこでは認知症同士が話し合う「本人ミーティング」ができるようになってきました。本人の困っていることや、やりたいことを聞き、個々の対応や国の政策に持っていくことが進められています。
昔は「ボケたら何もできない」と思われていましたが、実際にはそうではありません。むしろ本人が主役であり、本人の想いを聞き取って、サービスや政策をつくっていくことが、「オレンジプラン」という戦略の下で、国により進められています。
介護する側の支援としては、家族を孤立させないということが重要でしょう。悩みを聞いて介護方法を伝えたり、相談できる場所をつくっていくと、介護仲間がいるということが救いになります。良い先生だけでなく、良いケアマネージャーを見つけると、そうしたアドバイスをしてくれます。ケアマネージャーの選択も間違ってはいけない点です。
●病気ごとに異なる症状に合わせ、適したケアを行っていく
他にも、病気別のケアという概念もあります。アルツハイマー型認知症であれば、取り繕うことに対して安心感を与える、被害妄想に対しても否定をしない、などの対応が考えられます。レビー小体型認知症であれば、起立性低血圧でバタンと倒れることがあるので、倒れないように、あるいは倒れても大丈夫なように配慮をするという対応です。病気によっても対応が違うのです。
前頭側頭型認知症の場合、性格が変わったり、走ってどこへ行ってしまうという症状により事故が多くなりがちで、介護負担が増えます。いずれにしても、病気の対応は、病気一つ一つをよく知り、個別に行っていくのがポイントです。
血管性認知症の場合、良化したり悪化したりしますので、まずは体の疾患である血圧のコントロールをすることが重要です。また、環境が変わると、段階的に症状が悪くなるといわれているので、これを防ぐためにも、なるべく環境を変えないことも一つの方法です。
一番多いのは、家族が亡くなった際にガクッと症状が悪くなるというケースです。また、ショートステイ(短期入所生活介護)の場合も進行してしまうことがあります。いずれにしても、環境の激変は血管性認知症には良くありません。嚥下障害や歩行障害に注意すべきでしょう。
嚥下障害はどの認知症にも見られる症状です。誤嚥や嚥下障害により、最終的に肺炎で亡くなることはよくあります。日本では直接的死因を書くことが多いので、医者は認知症の死亡病名として肺炎や心不全とすることが多いのです。しかし、最近はアメリ...