科学技術とイノベーションマネジメント
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
力を入れるべき教育分野を見定めるのが難しい理由
科学技術とイノベーションマネジメント(2)情報科学教育
梶川裕矢(東京大学 未来ビジョン研究センター 教授/東京科学大学環境・社会理工学院 特定教授)
経済成長に関わるイノベーションは、教育の方向性にも表れている。東京工業大学環境・社会理工学院教授の梶川裕矢氏によれば、それはアメリカの情報科学に顕著であるという。アメリカにおける将来産業の見通しや先行投資はいかなるものだったのか。また、それに対して日本の問題点はどこにあったのだろうか。(全7話中第2話)
時間:12分23秒
収録日:2018年6月18日
追加日:2018年10月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカにおける情報科学の進展と経済成長


 教育が経済成長につながった一番の顕著な例は、アメリカにおける情報科学です。

 このグラフにおける赤い丸は、アメリカの大学院で情報科学の修士号を取得した学生の数を表しています。1970年には年間2000人で、そこから徐々に増えていき、1990年には1万人、2000年には2万人になりました。

 前回お話しした光触媒は、20年にわたる基礎研究と10年にわたる企業での研究開発を経て事業につながりました。科学技術や教育には非常に時間がかかります。この灰色や黒っぽい丸は、マイクロソフトMicrosoftやアップルAppleの売上高を指しています。これらの企業は70年代に情報科学に力を入れ始めたのです。このグラフから結論付けるのは短絡的かもしれませんが、この時期のアメリカでは、「これからはハードウエアではなくソフトウェアが中心となる」という考え方の下、戦略的に情報科学に舵を切っていきました。

 教育に対する投資のリターンはすぐに生じるものではありません。大学院を卒業した後、すぐに会社で即戦力になるのがもちろん望ましいのですが、それはなかなか難しいことです。大学院を卒業し、高度な専門性を備えた人が企業に入って15~20年がたち、30代半ばから40代になったときに、最も脂が乗り切った企業人として仕事ができる状態になります。そうした専門性を備えた職業人が一定の数に達したときに、マイクロソフトMicrosoftやアップルAppleの売上高はこのグラフのように伸びて行くのです。これによって、シリコンバレーがソフトウェアで花開いたということができます。


●日本は、情報科学に力を入れ始めるのが遅かった


 このように、アメリカは将来の産業にとって何が重要かを見越し、教育や科学技術に対する先行投資を行っていきました。それに対して日本はどうだったのでしょうか。アメリカとの比較をしたものが、このグラフです。

 赤が、アメリカの大学院でコンピューターサイエンスの修士号を収めた人の数です。それに対して青が日本です。日本では修士号を取っているとしても、どの分野で取っているかは判然としておらず、質的な保証もできないという議論があります。また残念ながら、私の調査では、日本の大学院でコンピューターサイエンスの分野で修...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎