●引用ネットワーク分析により、研究分野の全体像を把握できる
1点目の研究開発動向の把握から、順番に説明します。ここで主に用いる手法は引用ネットワーク分析です。この図の場合、丸が個々の論文や特許を表し、矢印が引用関係を示しています。この論文や特許の持つ引用関係を線でつなぎ、同じような引用関係を持つ論文や特許群をクラスタリングという方法で1つにまとめます。
そして同じクラスタに属する引用関係に同じ色を付けて描画すると、引用関係が可視化され、研究分野の全体像の見取り図を作ることができます。
●自身の方向性にとらわれず、虚心坦懐にデータを見よ
少し古い例ですが、これは2010年から2014年までの5年間における、世界のコンピューターサイエンスのトップ10パーセント論文を示したものです。「トップ10パーセント」とは、論文が何回他の研究者に引用されたかについての上位10パーセントです。全体で約24万論文あり、中にはコンピューターサイエンスのメインストリームとはつながっていない研究もありますので、それらを除外して分析を行いました。
このオレンジや黄色、青などカラフルな模様からなる絵を見ると、色分けされたテーマごとに、コンピューターサイエンスといってもさまざまな領域があることが分かります。例えば、オレンジは、IoTやワイヤレスネットワークを意味しており、アンテナ(antenna)やネットワーク(network)、スマートグリッド(smart grid)がキーワードになっています。主な研究をしている国は、アメリカや中国、カナダです。
2番目に大きな領域は、青の部分のアナリティクス(Analytics)で、人工知能の研究です。3番目はクラウド・コンピューティング(Cloud Computing)で、それ以下では可視化(Visualization)やイメージング(Imaging)、モバイル(Mobile)、データマイニング(Data Mining)など、さまざまなテーマで展開されています。
この分析は、現在では非常に短時間で行うことができます。そのため、コンピューターサイエンスについて全く何も知らない状態であっても、極めて効率的に分野の全体像を理解できます。
これは、自分たちが研究開発を進めていく際のエビデンスとして活用することができます。例えば、ある会社がこれからAIや...