●現代の科学技術を理解するための「計量書誌学」
複雑化する社会や科学技術の下では、従来の科学技術ではないメタな科学技術が必要です。サイエンスに加えて、サイエンスオブサイエンスやイノベーションサイエンス、従来のディシプリン(分野)に立脚した研究だけではなく、分野と分野の間を融合したり(インターディシプリン、トランスディシプリン)、科学技術と社会および産業の接点となる学問をどのように作っていけば良いのかという問題もあります。現在ではこうしたことが、非常に重要なテーマになっているのです。
これらを考えるための方法論として、経営学や組織論、データ分析などが考えられます。今回はその中でも、「計量書誌学」という学問についてお話しします。
●計量書誌学は、研究事業戦略に応用できる
計量書誌学とは、論文の書誌情報や特許、最近であればSNSやウェブサイトなど、何らかの言語で書かれたものやそれに付随するデータを定量的に扱う学問分野です。
この計量書誌分析は何に応用できるのでしょうか。現在、各企業で用いられ始めているものは、研究・事業戦略です。さまざまな論文や特許などのデータに基づき、戦略を練るというもので、いろいろなことが可能となります。
中でも、インスティトゥーショナルリサーチ(Institutional Research、制度的調査)やインベスターリレーションズ(Investor Relations、投資家向け広報)ですが、データの分析結果を、組織の管理や運営、内部の施策改善、ベンチマーキングの実施、企業や大学のプロモーション、投資家に対する説明責任のために用います。これは、データドリヴン(Data-driven、データ駆動型)とエビデンスベースト(Evidence-based、科学的根拠に基づいて)という二つのデータ分析の方針のうち、後者に近いものです。
データとエビデンスは、しばしば同じ意味で用いられますが、あえて2つを区別すると、エビデンスベーストとは、あらかじめ主張したい何かがあり、その裏付けとなるデータを作るものです。それに対して、データドリヴンとは、エビデンスベーストと異なり、あらかじめ主張したいものはなく、データを虚心坦懐に眺めて分析し、その中から浮かび上がってくるものを捉えようとする手法です。
スライドの1点目のIR(Inv...