新しいインフラの役割とその波及効果
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
インフラの波及効果を科学的に分析する必要性
新しいインフラの役割とその波及効果
政治と経済
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
インフラは需要面だけでなく、供給面にも貢献し得るものである。よって、総需要および総供給への刺激という観点でインフラの効果を見なければならない。今回の講義では、インフラの在り方とその新しい役割、またその波及効果について解説する。
時間:15分51秒
収録日:2019年2月20日
追加日:2019年5月12日
≪全文≫

●インフラの効果は需要側面だけにあるのではない


 今回は、「インフラを科学する」ということで、これからのインフラの在り方、そしてインフラの効果をどういう形で測定していくか、ということを考えてみたいと思います。

 道路や鉄道、橋や空港など、インフラと呼ばれているものは、今までは公共事業の一つとして考えられてきました。公共事業を行うときは、ある種の景気対策にもなるといわれており、景気対策としてのインフラの建設であったり整備であったりということが、割と強調されてきたと思うのです。

 ところが、実はインフラはそのような公共事業で需要を伸ばしていくという側面だけではなく、経済全体の生産性、場合によっては成長率といったものを上げていく効果があるのではないか、という点が強調したいポイントの一つです。


●インフラで総需要を増やし経済を活性化させる


 もう少し詳しくお話しすると、そもそも何か公共事業を行って、道路や橋といったものを造ろうとすると、そのために働く人手が必要になります。それから、それらを建設するためには資材や材料が必要になってきます。そうすると、そこで雇用される人は、場合によると今まで仕事のなかった人がそこで働けるようになる、あるいは今までよりも高い給料で働けるようになる、ということが起こり得ます。その結果、その人たちが所得を増やして、それがその人たちの消費を増やす形につながっていきます。

 あるいは、資材や原材料が必要になるとすれば、そういうものを提供する会社には、それだけの仕事(発注)が増えることになり、結果として会社としての売り上げが上がり、その会社で働いている人の賃金が増えたり、あるいはその会社に出資している人の所得が増えたりします。このようなことがあって、やはりここでも消費が増えるだろうと考えられます。それから、さまざまな設備投資が追加で必要になるかもしれないので、そうなると投資も増えるでしょう。

 このようにインフラをつくろうとすることで、経済全体としての消費や投資などが、増えるのではないかと思われます。これが経済学でいうところの「総需要」、つまり経済全体の需要を増やす役割があるということです。この総需要を増やすという点で、インフラはいわゆる景気対策になると考えられてきたわけです。

 確かに現実的にはこういう面があります。特に経済面...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮