雪氷防災の今とこれから
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
屋根に積もった雪が落ちてくると衝撃はどれぐらいあるか
第2話へ進む
中谷宇吉郎氏が「天から送られた手紙」と表した雪の多様性
雪氷防災の今とこれから(1)雪の性質と降り方
科学と技術
上石勲(防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 特任参事/長岡技術科学大学 客員准教授)
地球温暖化などの影響を受け、最近の冬は暖かくなり雪が減ったといわれるが、本当にそうだろうか。雪崩をはじめとして路面凍結による道路の通行止め、歩行者の転倒など、雪による事故のニュースは後を絶たない。実際のデータから「雪は減っているのか」、また空から降る雪の性質について、解説いただく。(全7話中第1話)
時間:11分39秒
収録日:2019年4月5日
追加日:2019年6月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●毎年約100人が亡くなっている「雪」の災害


 このシリーズでは、最近の雪と氷による災害(雪氷災害)の紹介とその基礎的な話、それから私が所属している雪氷防災研究センターの新しい取り組みについてお話をしていきます。

 私は、国立研究開発法人防災科学技術研究所の雪氷防災研究センターでセンター長を務める上石です。どうぞよろしくお願いします。

 雪による災害について、私どもの研究所では2000(平成12)年から統計を取っています。グラフ上では、亡くなった方の数を赤線、件数を青線で表しています。赤い線に注目していただくと、毎年100人近い方が亡くなる災害であることが分かります。

 地震や火山による災害のように一瞬で起きる突発的なものではありませんが、ジャブのように影響が出る災害です。雪の多い年には200人以上の方が亡くなります。毎年こうした傾向が続いていくので、災害としては非常に大きなものであると思っています。

 災害の件数全体にしても、多い年には1000件以上と、非常に多くなっています。推移を見るかぎり、最近が減っているわけでは決してありません。2017~18(平成29~30)年は209名の方が亡くなられているということで最近も多く、非常に大きな社会的な問題になりました。


●「暖冬少雪」といわれるが、実際の降雪はまだ多い?


 私ども防災科学技術研究所の雪氷防災研究センターは、新潟県の長岡市と山形県の新庄市にあります。このグラフは、そこで1964(昭和39)年から測っている1年間に一番雪が積もった深さ(年最大積雪深)です。赤い線は長岡、青い線は新庄の観測値を年ごとに並べた記録になります。

 これを見ていただくと、1987(昭和62)年ごろまでは雪が多く、その後平成になってからは雪の少ない時期が続きます。しかし、2005~06(平成17~18)年ごろから雪の量はむしろ多くなっていて、決して減少傾向に向かっているとはいえません。

 「暖冬少雪」とよくいわれますが、決してそうではないのです。暖冬の年ももちろんあるのですが、雪の量は結構多いという年もよくあるのです。2011~2013(平成23~25)年は、長岡と新庄の両観測点でかなりの量の雪が降っており、2メートル以上を記録しています。

 また、2018年の冬もやはり雪が多く、2メートルほ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将