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雪氷対策はハードとソフトの両輪がないと追いつかない

雪氷防災の今とこれから(6)雪害に対する備え

上石勲
防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 特任参事/長岡技術科学大学 客員准教授
概要・テキスト
雪氷対策はハードとソフトの両輪でやっていかないと追いつかない。雪害に備えて、スノーシェッドや雪崩予防柵、消雪パイプなどのハードを完備することは、経済的に困難だからだ。大雪・吹雪の予測を精緻化し、ソフト対策を進める努力の一例として、那須岳雪崩事故の教訓を今後に生かす方法が模索された。(全7話中第6話)
時間:09:29
収録日:2019/04/05
追加日:2019/06/20
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≪全文≫

●雪氷対策はハード・ソフトの両輪でやっていかないと追い付かない


 ここまでは雪に関する基礎的な話と、雪氷災害に関する話をしてきました。今回は、実際の対策はどうしているかについて紹介していきます。

 「雪害に対する備え」と題しましたが、日本の雪氷対策はハード対策だけではなくソフト対策も両方やっていかないと追い付かないところがあります。

 例えば、道路では道路の除雪や屋根雪の対策、山間部では雪崩の対策、風通しのいい箇所では吹雪対策などが必要になってきます。それぞれについて、スノーシェッド、雪崩が起きないように斜面上に付ける予防柵、道路上に地下水をまく消雪パイプなどがあります。

 雪の害があるところ全てにそれらを設置すると経済的に非常な負担になりますので、やはりソフト対策を併用していくことが基本になります。


●道路上の雪に対処する3つのハード


 機械除雪には、まず降ったばかりの雪を飛ばす「新雪除雪」があります。除雪トラックによって、軽い新雪を飛ばしていくものです。

 しかし、飛ばした雪も一旦脇に寄せると雪粒同士がくっつきやすくなって硬くなります。そのような雪は、ロータリー除雪車を用いる「拡幅除雪」の対象になります。狭くなった道路を広げていくような除雪です。このように、雪の性質が変わるにつれて、除雪の仕方も変わっていきます。

 次に道路上に積もった雪を溶かす「消雪パイプ」です。この図は新潟県上越市の例で、外からくみ上げた水を温めて、また外にまいていくように工夫されています。

 上越市は、写真のように非常に道路が狭く、先に言った除雪トラックを走らせることができません。そのため、道路上に地下水や温めた水をまくような消雪施設が必要になってきます。


●バケツ1杯の雪を溶かすのに必要なお湯の量は?


 消雪(融雪)には、非常にお金やエネルギーが必要になってきます。例えば0度のざらめ雪500キログラムが入ったバケツ1杯を溶かすのには、10度のお湯でバケツ何杯分必要になるでしょうか。答えを明かすと、4杯必要になります。

 バケツ1杯の雪を溶かすのに4倍...
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