●2017~18年、除雪も間に合わない大雪が北陸に降った
前回までは雪の性質の話と、それによって起こる雪の害についてお話をしてきました。ここからは実際にどういう災害が起きたかということと、また近年は雪が少ないわけではなくむしろ多いこともあり、近年の雪の災害(雪氷災害)についてお話ししていきたいと思います。
これは2017~18(平成28~29)年の大雪で、除雪が追い付かずに渋滞が起きています。写真は新潟県の新聞記事ですが、北陸では福井県や石川県でも同様の渋滞が発生しました。
こちらは「北陸大雪」と題して福井の状況を伝える記事です。雪が積もって幹線道路の除雪が追い付かないのです。新潟市同様、大量の雪が生産・物流活動に大きな影響を与えました。
●24時間で60センチもの雪をもたらす「収束帯」
これは、新潟県の三条市で行った雪と気温の観測で、2018(平成30)年の1月から2月上旬の記録です。1月の10日から11日にかけては、24時間で60センチぐらいの雪が降っています。このぐらいの雪が降ると、雪国の三条と言ってもやはり支障が出てきます。それから、2月の5日から7日にかけては1メートル以上の雪が積もりました。これだけ雪が積もると、雪国とはいえ、数多くの支障が出てきます。
雪の降り方については、気象衛星から撮った雲の画像をご覧ください。注目していただきたいのは、白くて濃い雲がつながって見えているところで、こういう雲ができると、その下で雪がたくさん降りやすいことが分かっています。
こういう雲の群れを「収束帯」と呼びますが、同じ場所に留まることでたくさんの雪を降らせます。ただ、雲がいつどこにできるかの予測は難しいものであり、雪を降らせる収束帯がどういう条件で発生して、どう流れていくかということも、研究課題です。ここを解明していくことで、雪の予測はもっと正確に出るようになると期待されます。
2017~18年の2月初め、新潟県内の歩道上でアーケードが壊れた状況です。雪国でも、あまりにたくさん雪が降ると、道路の渋滞だけではなく、積雪によってアーケードが壊れるなどという状況も出てきます。
●「降るときは降る」2000年以降の状況
これは、私どもの長岡雪氷防災研究センターで観測している雪の記録で、12月から3月のデータを過去48冬季分、毎日降った雪の量が比較できるよう表したものです。黒い線が2017~18年の記録をつないだもので、上の方にあればあるほど1日に降った雪の量が多いということになります。
これを見ると2018年、大雪の年の2月5日には1日80センチ降っています。一番多かったのは1986(昭和61)年の大雪で、111センチを記録しています。ベスト10を取ってみると、右上に表があるように2000年以降が半分を占めています。
シリーズの冒頭で申し上げた通り、「暖冬少雪だ」といわれていても決してそうではなく、たくさん降るときは降るのです。集中して降るときは降ることが、この結果からも明らかです。ですので、少雪だから安心していいということは決してなく、むしろたくさん雪が降るときは降る可能性に注意を払う必要があると思います。
●大雪であらわになる道路構造上の弱点
これは、同時期の福井の観測記録です。気象庁アメダスの福井県観測点から降雪量(青)、積雪深(緑)、気温(黄)をつないでいます。福井でも長岡と同じように1月10日、2月4~5日にたくさんの集中的な降雪がありました。
われわれは降雪の後で調査をしに行きました。あわら市内の国道8号線では両側に雪を溜めていましたが、除雪した雪を外に排出できない構造のところでは、雪がどうしても溜まってしまい、除雪が追いつかなくなって、渋滞を起こしていました。また、写真に見るような斜面のところもたくさんあり、スリップしやすくなることから、より渋滞が起きやすくなっていました。
たくさん雪が降ると、道路の構造が狭くて雪が出しづらい地点、斜面やスロープで滑りやすいところなどが目立ち、道路交通に支障が出てきます。
この年は気温も低かったため、大雪の後10日ほどたっても福井市内ではこれだけの雪が残っていました。雪がたくさん降ると、社会生活に長く影響を及ぼすことになります。
●想定外の大雪で雪崩に埋まった国道158号線
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