雪氷防災の今とこれから
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吹雪や表層雪崩、地吹雪を起こすのは「軽い」雪
雪氷防災の今とこれから(3)着雪・冠雪・圧雪の被害
科学と技術
上石勲(防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 特任参事/長岡技術科学大学 客員准教授)
吹雪や表層雪崩、地吹雪を起こすのは、「軽い」雪である。湿った雪はくっつきやすくなり、払い落としにくい着雪や冠雪として被害を与える。積もれば積もるほど重くなる着雪は、時には住宅を壊すほどの力を持つ。雪には、「滑りやすさ」の特性もあり、車の交通に支障をきたす。(全7話中第3話)
時間:8分11秒
収録日:2019年4月5日
追加日:2019年6月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●軽い雪が起こす吹雪や地吹雪


 雪が軽いときはどうなるか。重い雪には硬い性質があるので衝撃があるわけですが、積もったばかりの新雪の場合、逆に「軽い」という性質があります。軽い雪では吹雪や表層雪崩という表面だけを滑る雪崩が起きやすくなることが分かっています。

 写真は左が新潟県上越市内、右は北海道の中標津です。新潟県などでも気温が低く風が強くなると、吹雪が起こって全然見えなくなります。写真ではまだ多少は見えている状況で、これ以上になり、2メートル先も見えなくなるようだと写真を撮っても何も分からなくなります。

 北海道(中標津)の写真では道路が見えていますが、ここは吹雪によって運ばれてきた雪が溜まる「吹きだまり」と呼ばれる場所であるため、吹雪を防ぐ柵が右の方に認められます。気象条件によっては、この柵が全部埋まってしまう場合も出てきます。

 私どもの観測や実験では、どういうときに吹雪が起きやすいかなども調べています。どのぐらいの風が吹いたら雪の粒が転がり出すか、どのぐらいの風になると転がった雪粒がぴょんぴょん跳ねて空中に巻き上がるかを調べ、これらをもとに吹雪の予測などを出すようにしています。

 吹雪は「吹く雪」と書くように、雪が降っていなくても起こる場合があります(「地吹雪」)。写真は、太陽が出ていて風や雪は降っていないのに、地吹雪によって道路が全く見えなくなっている状況です。


●木の折れる「着雪」被害を与える湿った雪


 次に湿った雪、0度の雪を見ていきましょう。0度の雪は水が含まれているので、くっつきやすい特性があります。

 右の写真は新潟県長岡市の研究所前の杉の木に積もった雪です。0度ぐらいで雪がたくさん降ると、雪同士がくっつきやすいので、木の上にもこのように雪がたまります。たくさん積もると木が折れたりします。

 左は徳島県の例です。もう雪がなくなった後で調査に行きましたが、四国・徳島県でも「着雪」「冠雪」と呼ばれる被害があるのです。写真中央の辺りに倒れた木が橋のようになった状況が見えます。斜面上の杉の木に雪が積もって折れ、右側の屋根の上に乗ってしまっています。着雪の被...

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