●軽い雪が起こす吹雪や地吹雪
雪が軽いときはどうなるか。重い雪には硬い性質があるので衝撃があるわけですが、積もったばかりの新雪の場合、逆に「軽い」という性質があります。軽い雪では吹雪や表層雪崩という表面だけを滑る雪崩が起きやすくなることが分かっています。
写真は左が新潟県上越市内、右は北海道の中標津です。新潟県などでも気温が低く風が強くなると、吹雪が起こって全然見えなくなります。写真ではまだ多少は見えている状況で、これ以上になり、2メートル先も見えなくなるようだと写真を撮っても何も分からなくなります。
北海道(中標津)の写真では道路が見えていますが、ここは吹雪によって運ばれてきた雪が溜まる「吹きだまり」と呼ばれる場所であるため、吹雪を防ぐ柵が右の方に認められます。気象条件によっては、この柵が全部埋まってしまう場合も出てきます。
私どもの観測や実験では、どういうときに吹雪が起きやすいかなども調べています。どのぐらいの風が吹いたら雪の粒が転がり出すか、どのぐらいの風になると転がった雪粒がぴょんぴょん跳ねて空中に巻き上がるかを調べ、これらをもとに吹雪の予測などを出すようにしています。
吹雪は「吹く雪」と書くように、雪が降っていなくても起こる場合があります(「地吹雪」)。写真は、太陽が出ていて風や雪は降っていないのに、地吹雪によって道路が全く見えなくなっている状況です。
●木の折れる「着雪」被害を与える湿った雪
次に湿った雪、0度の雪を見ていきましょう。0度の雪は水が含まれているので、くっつきやすい特性があります。
右の写真は新潟県長岡市の研究所前の杉の木に積もった雪です。0度ぐらいで雪がたくさん降ると、雪同士がくっつきやすいので、木の上にもこのように雪がたまります。たくさん積もると木が折れたりします。
左は徳島県の例です。もう雪がなくなった後で調査に行きましたが、四国・徳島県でも「着雪」「冠雪」と呼ばれる被害があるのです。写真中央の辺りに倒れた木が橋のようになった状況が見えます。斜面上の杉の木に雪が積もって折れ、右側の屋根の上に乗ってしまっています。着雪の被害にも、大きな社会的影響があります。
こちらは、新潟県長岡市の長生橋という古い橋です。右が車道、左が歩道で、車道の上には金属の囲いがついた構造になっています。囲いの上に積もった雪が落ちてきて、下を走行する車に影響することもあります。ここでは夜中に車を通行止めにして、散水によって雪を落としています。着雪被害の対策はなかなか難しく、この辺りのことも私どもの研究課題になっています。
●着雪害にはまだ画期的な対策がない
この写真は、道路の上に乗っている「門柱」というものです。このように、平らな部分があったり複雑な形になったりしていると、そこに雪が積もりやすくなります。一旦雪がつくと、0度の雪はくっつきやすいので、どんどんくっついていって、これほど大きな塊になってしまいます。
この塊が落ちてくると、前回(第2話)の動画のように車に被害が出ることもあります。そこで、できるだけこうしたものができないような構造にします。形を三角にしたり屋根をつけたりすることも試していますが、着雪害についてはまだ画期的な対策はありません。
溶かそうとする試みも行っていますが、溶かしてしまうと水になるので、気温が下がるとつららができたりします。今度は氷の性質なので硬くなります。落ちてくると、小さな塊でもフロントガラスが割れます。そのように、着雪の害についてはこれといった対策が今のところない状況です。
次の写真では、雪国の信号が縦型なのに注目してください。雪ができるだけ積もらないようにしたいので、縦にしています。それでも縦の上のわずかな面積に雪が積もってしまうので、現実にはこの写真のように、手で落とす作業が行われています。
●家や建物を壊してしまう雪の重み
それから、雪は積もれば積もるほどどんどん重たくなっていきます。この写真は、屋根の上にたくさんの雪が積もって、家や建物が壊れている状況です。
これは新潟県の妙高市という雪の多い地区で撮影しました。2015(平成27)年の1月末から2月にかけて雪の深さが2メートルになるほど雪が降りました。この時、1平方メートル当たりの雪の重さは800キロと観測されています。
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