雪氷防災の今とこれから
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
屋根に積もった雪が落ちてくると衝撃はどれぐらいあるか
雪氷防災の今とこれから(2)積雪と雪害
上石勲(防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 特任参事/長岡技術科学大学 客員准教授)
雪の形や性質は、降り積もった後、気象条件や重量、水の介在などにより変化していく。性質の変化が雪崩の起きやすさや吹雪につながるので、専門機関では積雪の研究に余念がない。ここでは、屋根の上に積もった雪が落ちてくると、どのぐらいの衝撃があるか、動画で確かめていく。(全7話中第2話)
時間:8分42秒
収録日:2019年4月5日
追加日:2019年6月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●積もった雪は時間がたつにつれて質が変わっていく


 第1回は降雪の話として、雪が降るときについてお話ししましたが、今回は雪が積もってからの積雪についてお話ししていきます。

 私どもの研究所では、写真のように積もった雪を掘り、雪の内部を調べる作業を行っています。雪の質は時々刻々変わっていくからです。

 顕微鏡写真ではこれほど変化しています。「新雪」という新しく降ったばかりの雪には、結晶の形がところどころ残っています。時間がたつにつれて「しまり雪」と呼ばれる状態に移行します。一個一個の雪の結晶が丸くなってきて、それがくっついたりする(焼結)のです。時間がたつにつれて、雪の形はだんだん単純になっていきます。その間さらに気温が上がったり、雨が降ってきて水が介在したりすると、「ざらめ雪」になります。さらに変化が進むと、周りに水が付いた湿った雪になってきます。

 こうして雪の形が変わるにつれて、雪による災害も変わってきます。私どもでは、形の変化に伴う性質の変化を見極めるため、最初のスライドのように雪を掘り、雪の性質調査を頻繁に行っているのです。


●雪の質が変わっていくため災害予測も困難になる


 これは、積雪の断面観測の様子です。雪を掘った断面に青いインクを加えると、雪の中にある層構造が見えてきます。基本は地層と同じで、下の方にいくにつれて古い雪、上の方にいくにつれて新しい雪になります。

 ご覧いただいている断面では、下から25センチぐらいが「ざらめ雪」という非常に粒の大きな層です。真ん中当たりは「しまり雪」、一番上の方が「新雪」の層です。降ってくる雪には結晶の形が多く残っていて、形が複雑なので隙間が多く、空気を多く含みます。それが新雪ですが、しまり雪になると、結晶が丸みを帯びて、互いにくっつき合っていきます。

 くっつき合うという特徴があると、その部分は雪崩が起きづらいことになります。また、新雪は降ったばかりで絡み合っていないため、風が吹くと吹雪になります。逆に、ざらめ雪では粒が大きくなるので、水分が入ると雪粒同士が離れやすくなります。そのような層では、地面との間で雪崩が起きることにつながっていきます。

 このように雪の質...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一