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「環境は大きく分けて3つの性質からなる」

「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(4)水と空気にある情報

佐々木正人
多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科客員教授/東京大学名誉教授
概要・テキスト
動物は空気や水といった媒質の中を移動でき、そのことで生じた情報の変化を知覚する。つまり、媒質には移動と知覚のアフォーダンスがあるということだ。われわれはそうした媒質に取り囲まれていて、その情報を探ったり、導かれたりしている。(全9話中第4話)
時間:15:04
収録日:2019/03/18
追加日:2019/08/12
カテゴリー:
≪全文≫

●環境は3つの性質からなる


 情報はおそらく、私たちを囲んでいるところにあると思います。ジェームズ・ギブソンは、「環境は大きく分けて3つの性質からなる」と言っています。1つは物質。これは異種の混淆物で、硬さや密度、粘性などがあるいわゆる物質です。スライドに写真がありますが、山もそうですし、橋も人の体や水自体も物質です。媒質というのは大体、空気が中心です。ただ、高い均質性を備えていて、無色で、無臭で、透明に近い、そういうところが情報の媒質になります。スライドでいうと、空気の中とか水の中などが媒質となります。

 ギブソンの理論の非常に特徴的なところなのですが、物質と媒質のインターフェース(界面)にあるサーフェス(表面)にはいろいろなレイアウトがあります。そのレイアウトにものすごくたくさんのアフォーダンスがあるのです。ですから、エコロジカル(生態学的)な心理学で環境を考えるときには、物質と媒質とサーフェスのレイアウトの3つを考えようということになります。今回は媒質について考えます。


●媒質のアフォーダンス-移動すると知覚情報が変わる


 水や空気にはいろいろなアフォーダンスがあるのですが、1つは抵抗なしにその中を動けるということです。水にはもちろん抵抗はありますが、物質の中を歩くことはできません。動物は媒質の中を移動するわけで、つまり媒質には移動のアフォーダンスがあるということになります。

 媒質はほぼ透明で光を伝達するので、視覚を与えます。物から生じる振動や圧、物をぶつけると衝撃波が伝播するので、聴覚を与えます。それから、われわれの身体もそうですが、有機物からは非常に微小な化学物質が放散していて、その周りには匂いの雲ができています。そうやって木なども匂いを出しているわけです。そのような小さな雲があって、嗅覚を与えています。このように媒質のアフォーダンスは移動と知覚が中心となります。

 重要な主張は、移動とは単にA地点からB地点に行くということではなく、移動すると視覚や聴覚や嗅覚の情報が変わるということです。ですから、動物が移動するというのは単なる場所を移すということではなく、情報を探索するというのがその目的なのです。

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