「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ギブソンの生態学的心理学の到達点ともいえる「生態光学」
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(5)生態光学:視覚論-1
佐々木正人(多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科客員教授/東京大学名誉教授)
ギブソンはパイロットの視覚研究を通して、物の面(サーフェス)のきめと光があることで空気が視覚となることを発見した。さらに、その光は単なる放射光ではなくネットワークをつくる包囲光であると結論した。今回はギブソンの生態学的心理学の中核をなす視覚の理論、生態光学(エコロジカル・オプティックス)について、2話に分けて解説する。(全9話中第5話)
時間:11分51秒
収録日:2019年3月18日
追加日:2019年8月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●ギブソンの到達点ともいえる視覚論


 それでは、ジェームズ・ギブソンの生態学的心理学の中心にある視覚の理論、生態光学(エコロジカル・オプティックス)について、お話しします。これが彼の到達点です。一言でいうと、「視覚の根拠は空気の中の光にある」ということを、彼なりにまとめた理論です。

 伝統的な視覚研究では、真っ暗闇にした実験室の中に小さな光点を提示して、そこまでの距離を実験参加者に聞くという方法が取られていました。視覚は触覚のように直接対象に触ることはできません。ですから、これは空間視、奥行き視といった近接感覚ではない、視覚の性質を調べるために行った実験です。

 19世紀のドイツ以来、長く続いてきた視覚研究の伝統からギブソンが抜け出すきっかけを得たのは、1940年代のアメリカ空軍心理学ユニットに参加し、パイロットの視覚を研究したところから始まります。


●ギブソンの気付き-視覚は多重な注意のシステムである


 当時は有視界飛行で計器はあまり使われていない時代でしたから、パイロットが何を見ていたかというと、1つは地面のレイアウトや「肌理(きめ)」の流れで、そこから現在の位置や移動距離を知るということです。それから、非常に重要な空中での機体姿勢、定位のコントロールは、「地面の見え」を使って行われていました。これは今でもグライダーの有視界飛行などでは、まさに地平線とか山並み、地面のパターンによって飛行するわけです。

 また、安全な着陸をするためには滑走路の「見えの拡大率」という流れを使っているということが分かりました。それから、向こうから飛行機が飛んできた場合、敵の飛行機、例えばメッサーシュミットなのか、友軍のグラマンなのかを見分けるときには、機体が動く変化の中でどの機種かを見分ける、つまり変化から不変なことを知るということで、これらのことをパイロットは同時にやっているわけです。

 ギブソンはここで1つ非常に重要なことに気付きました。視覚とはたくさんのことに同時に注意をしている、多重な注意のシステムになっているということでした。


●面のきめと光が媒質(空気)を視覚にする


 第1...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国共産党と人権問題(2)中国共産党は超法規的存在?
国家の上に存在する中国共産党はどのような組織なのか
橋爪大三郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑