「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
生態光学は肌理・空気・遮蔽でつくられた視覚論
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(6)生態光学:視覚論-2
佐々木正人(多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科客員教授/東京大学名誉教授)
われわれの世界は、多数の面のレイアウトで構成されているが、実はその面の遮蔽のへりで起こる変化が視覚の重要な情報となっている。つまり、われわれは隠されたものを知りたいがために遮蔽を越えて移動するわけで、これが視覚の本質なのだとギブソンは説いた。ギブソンの生態学的心理学の中核をなす視覚の理論、生態光学(エコロジカル・オプティックス)について引き続き、解説する。(全9話中第6話)
時間:11分18秒
収録日:2019年3月18日
追加日:2019年8月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●変化から不変なかたちが見えてくる


 われわれが普通に部屋にいるときのことを考えてみると、部屋は実は多数の面のレイアウトからできていますから、その面のレイアウトが眼の周りに包囲光の構造をつくります。

 1つの面は1つの立体角をつくっていて、知覚者は立体角で埋まった球状のものに覆われています。

 そのようなものの中で知覚者が立ち上がると、動かないときにできていた構造が崩れて変化が起きます。変化が起きたときに、包囲光の構造をつくっているものの不変な性質、例えば針金をぐにゃぐにゃに動かして静止してみせると、パースペクティブな遠近構造が見えるので、そこに何かが見えます。しかし、3次元に曲げられているような場合には、平面的なフォルムは見えるけれども、どんなシェイプかは見えません。そこで、針金全体をぐるっと回すと、どのような立体的な形(シェイプ)かが分かります。

 身体に関しても、(座っている状況から)立っている私の全身というものは想像するしかありません。このサーフェスが今、私を見ている皆さんの視覚の包囲光に、ある立体角をつくっているのですが、私がちょっと回って向きを変えたりすると後ろのレイアウトが見えてきて、「佐々木はどんな全身の形をしているのか」ということが分かるようになります。

 これが「変化から不変を見る」、ギブソンの言葉を使うと「formless invariant(かたちのない不変なこと)」で、変化から見えてくるということです。私たちはこういう世界のリアルな姿を見ているということになります。


●遮蔽のへりの変化が情報となる


 もう少し踏み込んで、何が一体そのようなことを可能にしているのかということを考えてみます。

 ギブソンは、それは「面の境界での肌理(きめ)の置き換わり」がそのような変化から不変を見るということを可能にしているのだ、と言っています。

 そのことを示すためにギブソンがつくったビデオがあります。

 皆さん、今、画面の左側にあるサーフェスの下に右側のサーフェスがすべり込んでいく所をご覧になったと思います。実はこれは、2...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏