「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「ダイナミック・タッチ」によって身体は情報を知覚する
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(3)身体:知覚するシステム
佐々木正人(多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科客員教授/東京大学名誉教授)
生態心理学者ジェームズ・ギブソンは、身体のことを「知覚システム」と呼んでいる。ヒトは胎児の頃から独特の横揺らし運動を行っているが、それがあらゆる動きの原型となっているというのだ。振って揺らすことを「ダイナミック・タッチ」というが、これによって身体はさまざまな情報を知覚する。その際に重要なのが慣性モーメント、つまりある種の振りにくさである。それはどういうことなのか。(全9話中第3話)
時間:16分19秒
収録日:2019年3月18日
追加日:2019年8月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●胎児の「ジェネラル・ムーブメント」


 身体ということについて、考えてみます。前回紹介した2冊目の『生態学的知覚システム』という本で、ジェームズ・ギブソンは身体のことを「知覚システム(perception system)」と呼んでいます。

 それがどのようなものかについて、1つの事例からお話ししたいのですが、これは月齢が4カ月くらい、あるいはもう少し幼いかもしれませんが、胎児のエコー画像です。おなかの中の胎児の動きが映っています。分かりにくいのですが、子宮の中で頭部が下になっていて足が動いています。全身も動き始めました。頭はあまり動いていないのですが、首から下が横に揺れるような形で動いているのがお分かりになるでしょうか。これは典型的な胎児の動きで、受精後8週くらいからこういう動きをしているということが知られています。

 この動きに、数年前からですから大分時間がたちますが、「ジェネラル・ムーブメント」と名前が付けられました。こうした動きは受精後2カ月くらいから始まります。これは反射的な動きでも、もちろん目的を持つ行為でもないのですが、あらゆる動きの原型として見られる一種の揺らしです。

 この研究は日本でも随分行われているのですが、胎内で見られる全身横揺らしのような動きから、誕生後にさまざまな行為が芽生えてくるということが分かっています。例えば、誕生後月齢が4カ月で始まるものに手を伸ばす「リーチング」といわれる動きも、胎内の横揺らしから出てくるということが分かっています。


●身体にとって重要な動き~ダイナミック・タッチ


 この振って揺らすことが身体にとって非常に重要な動きの1つだということが、だいぶ分かってきました。ではこれから「ダイナミック・タッチ」の研究についてお話しします。

 モノに触れて知るための方法には、その表面を皮膚の表面でなぞるという「皮膚タッチ(キューテニアス・タッチ)」があります。表面をなでて、いろいろな繊維の触感を知ったりするようなことです。

 もう1つは、モノ、あるいはモノの一部を持って振ることによって知るタッチです。これをギブソンは「ダイナミック・タッチ」と名付けました。こういう接触の仕方があるのです。フォーク...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(5)徳は孤ならず
敬天愛人…一人ひとりを大切にしながら宇宙を相手に生きる
田口佳史
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司