●生涯かけてミミズと土の関係を観察、研究
これはダーウィンの最後の著作で、亡くなった年に出された本です。日本でも翻訳が出ている『ミミズと土』という本です。
ダーウィンはビーグル号での旅行から戻ってきた翌年に、たまたま7年前にまいた石灰の層が消えたということを聞いて、その場所に調査に行ったのです。すると、まいた石灰が地表から7センチの所に層を作っていたのを発見。ダーウィンは、「これはミミズのせいだ。ミミズが石灰の上にフンをしてそこに土が積もってそのような結果になったのだ」と思い、「土壌の形成について」という論文を書いてロンドンの地質学会で発表したのですが、無視されてしまいました。
そこで、それから息子と一緒に延々と生涯通してその研究をしたのです。例えば、1841年から71年までの30年間、表土の黒土の重さを計量し、1年間1エーカー(1200坪)当たり8トンから18トンは、ミミズのフンと思われるものが出ているということを言っています。
また、石がどう埋まっていくのかということをずっと観察しました。これは有名な話なのですが、ダーウィンの家の庭には「ミミズ石」というものがあり、それが毎年どれぐらい埋まっていくかということを計量していたのです。すると、35年間で3.8センチ沈んだから、この石が完全に埋まってしまうには、後何十年かかるかというようなことを書いてあります。そのような本です。
ダーウィン亡き後、20世紀に入ってアメリカ農務省が、「ミミズは1エーカー当たり約50トンのフンをする。ミミズがかきまぜる土の量は1エーカー当たり1000トンだ」という報告をしています。この辺りから有機農法の話がはやり始めます。
●ミミズが地面をつくっている
ここでダーウィンが観察した、ミミズがフンを出すところの映像をご覧ください。映像では、ミミズはフンをしています。
こちらは都内で私が撮った写真です。少し気を付けて探してみると、このようなミミズの様子が見られます。
ダーウィンの主張は、地面はミミズによってつくられているということです。ミミズは4億年前からこういうことをやっているそうです。日本にも研究者がいて、間違いないことなのです。
ミミズは半水生の生物です。われわれは体内に腎臓を持っていますが、ミミズは、周囲の湿った土壌に腎臓の機能を担ってもらっています。
ミミズは土を食べ、有機物を取り入れて残りを排泄します。岩石粒子はミミズの体内で砕かれて小さくなります。これらのことはすなわち、地球の全表層が数年ごとにミミズの体を通るということです。さらにミミズは地中を動くので、土はミミズによってかき混ぜられます。このように、大地はミミズによって常に生きていてかき回されているということです。これは「わずかな変化がすごい変化を起こす」という、いかにもダーウィンが好みそうな主張です。
●ミミズの穴ふさぎに見られる特徴
彼がした仕事の中でサイコロジーに関するものがミミズの穴ふさぎについてです。
イギリスのミミズは、寒い冬に穴をふさぐそうです。映像をご覧ください。ミミズが葉っぱをくわえて穴ふさぎをしているところです。
ミミズに注意していても、なかなかこういうところは見られないのですが、いろいろな物で穴をふさいで、冬の乾燥と寒さを防いでいるようです。
例えば、シナの木だと葉っぱを70枚フィールドから持ってきて、どこから引き込まれたかを見てみると、先端のとがっているところが多くて、55枚も先端から引き込まれていたということです。
シャクナゲだと両側の大きさの差はあまりないのですが、それでも3分の2くらいは細い方から引き込んでいたということです。
松の針葉だと基部はくっついていて、自然界でのミミズはほとんどがくっついている部分から引き込んでいます。しかし、暖かい部屋の中で飼っているミミズの場合は、ちょっといい加減になるということです。また、先端のとんがっているところを切っても、あくまでも基部を利用すると...
(チャールズ・ダーウィン著、 渡辺弘之翻訳、平凡社ライブラリー)