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生態心理学者としてのダーウィンを考える

「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(8)ダーウィンの心理学-1

佐々木正人
多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科客員教授/東京大学名誉教授
概要・テキスト
チャールズ・ダーウィン
『種の起源』で知られるダーウィンは、動植物に関する緻密な観察記録も多数残している。『植物の運動力』『ランの受精』など、いずれも豊富な図版を多用し、植物は外からの生態学的な情報を受けて、動きや形を生みだしていることを証明している。この点に、佐々木正人氏はギブソンの情報論との関連性を見いだしている。(全9話中第8話)
時間:07:17
収録日:2019/03/18
追加日:2019/08/31
カテゴリー:
≪全文≫

●生態心理学者としてのダーウィンを考える


 アメリカの生態心理学者にエドワード・リードという人がいて、1990年代に交流があったのですが、40代で心臓病を患い亡くなってしまいました。非常に優れた本をたくさん書いているのですが、彼からチャールズ・ダーウィンのことをいろいろと教えてもらいました。彼によると、ダーウィンはひょっとしたらエコロジカル・サイコロジー(生態心理学)の先駆者だったかもしれないということです。

 映像でご覧いただいているのは晩年のダーウィンですが、生涯17冊の本を書いています。『種の起源』はいうまでもなく有名ですが、それ以外にいろいろな動植物を対象にした分厚い観察記録を残しています。


●観察と記録に徹したダーウィンの『植物の運動力』


 例えば、『植物の運動力』は亡くなる少し前の1880年に書かれた本です。

 これは、多種の植物の幼根や子葉、茎、葉の先端に小さな黒いビーズ玉を付けてガラスの板を置き、それらが動いた痕跡が黒く残るようにしたのですが、それを196枚の図で示した本なのです。私はロンドン郊外のダーウィンの家に行ったことがあるのですが、彼はほとんどそこで暮らしていて、毎日このような観察をしていたようです。

 例えば、上にソラマメの幼根に小さな紙片を付けると右に曲がるという図を示しました。

 また、上はソラマメの幼根をススを塗ったガラスのそばに置いた時にガラスの上に残した痕跡や、キャベツの幼根の回旋と屈地性(地面に向かっていく)運動、あるいはキャベツの子葉の回旋運動やキャベツの背地性(地面を避けて上に行く)運動などですが、これらは23時間の記録です。

 他にも、上にシクラメンの花柄の成長を67時間追った図、ヤマユリの茎の回旋運動37時間の図、ノウゼン...
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