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20万人以上の巨大組織を率いる要諦は何か

自衛隊改革(3)防衛大臣に求められる資質

小野寺五典
衆議院議員
情報・テキスト
防衛大臣時代、小野寺氏は積極的に足を動かし、それまであまり光の当たっていなかった小さな部隊に出向き、激励を行った。こうしたモチベーターとしての役割も防衛大臣に求められるところだが、求められるのはそれだけではない。防衛省はさまざまな仕事集団によって構成されるため、それらをいかに統括していくか、その手腕も問われている。(全4話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:14:03
収録日:2019/06/19
追加日:2019/10/31
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≪全文≫

●足を動かすことで自衛隊員のモチベーションを向上させる


―― 小野寺先生は防衛大臣時代、歴代大臣が今まで誰も行かなかった基地を、休みの日などに順番に回ってらっしゃいました。そのような地道な努力がものすごい共感を呼びました。

小野寺 歴代大臣は、だいたい近場で大きな部隊のところに視察に行かれると聞いていました。そこで私は、なるべく遠くて、行きにくく、小さい部隊があるところに出向き、一生懸命回って「皆さんがやっている仕事は国のために役立っているのだ」という事実をお伝えし、激励していました。

 例えば、離島の山の上に、レーダーサイトで24時間365日常に監視するため、不便な生活を続けている部隊もあります。ですが、この部隊がなければ、北朝鮮のミサイルを防衛することもできません。こうした場所をしっかり回って激励するということが、ある面では指揮官の重要な仕事なのです。モチベーションを高めるには、やはり「皆さんがやっている仕事は日本のためになっているのだ」ということを私が十分に認識し、感謝していることを伝えるのが大事だと思います。そうすれば士気を上げることができるのではないでしょうか。士気を上げることも指揮官の重要な仕事です。

 例えば、航空自衛隊のレーダーサイトであれば、私が出向くと航空幕僚長という航空自衛隊のトップが必ず同行します。個々の部隊の隊員たちは、こうしたトップの人間にも会ったことがありません。また、その地域の航空自衛隊トップも同行しますが、彼らはその人物にさえ会ったことがないのです。つまり私が出向くことで、こうした普段見たことない人たちが一気についてくることになります。そして逆に、こうして同行するトップたちには、「私が行く前に今度はあなたたちが、こうした部隊を回って激励してほしい」と伝えます。


●防衛省で「五族協和を目指す」といわれる理由


―― そのような地道な努力による共感がないと、自衛隊のような20数万人の大きい組織を変えてくことはできないということですね。しかも陸海空があり、さらにその中で出身母体である専門分野に分かれているわけですから、それら全員を束ねていくのは、そうした共感があって初めてできるのではないでしょうか。

小野寺 自衛隊について、面白い見方があります。これは同時に防衛省の難しいところでもあるのですが、よく「五族協和を目指す」といわれます。防衛省は陸海空に加えて内局と技官という、5つの大きな仕事集団で構成されています。

 例えば、陸上自衛隊は、海上自衛隊や航空自衛隊に対して「君たちのところは予算が潤沢にあっていいな」と思っているかもしれませんし、海上自衛隊は陸上自衛隊に「君たちはいつも陸で生活できていいな」と思っているかもしれません。互いにいろいろな思いがあるでしょう。

 さらに背広組と呼ばれる内局がいます。彼らに対して自衛官たちは「いつも予算を削れなどとばかり言ってくるな」と良い印象を持っていないかもしれません。そして、技官ですが、そこはいろいろな技術者によって構成されています。研究開発や地方での新基地設計などに携わっている人たちです。こうした人たちは、内局の人たちがするたくさんな頼みごとに困っているかもしれません。

 防衛大臣の仕事は、こうした多様な人たちの中で、うまく彼らの関係をコーディネートし、互いがうまく調和できるようにすることです。このことを私は「五族協和」と呼んでいます。面白いですよね。ですから、他の役所がどうかは分からないのですが、防衛省自衛隊の難しさはこの5つの集団を調和させなければ、どこかで必ずほころびが出てしまうということです。小さなほころびが大きな問題になり、国会で指摘される可能性もあります。そのため、組織としてしっかり監督しなければならないのです。


●アメリカの軍隊と日本の自衛隊の違い


―― なるほど。その五族協和を実現するのは相当大変かと思います。それに対してアメリカでは、ペンタゴンと米軍の関係が比較的スムーズに構成されているように見えるのですが、実際にはどのような印象をお持ちでしょうか。

小野寺 やはりアメリカにおいては、制服組の人間が実は政策の中枢にも入ります。日本はどうしても戦前の反省があるので、シビリアンコントロールをかなり厳密に適用しています。シビリアンコントロールとは、私たちのような政治家が、国民の付託を受けて指揮をするというものです。日本の場合にはそのため、たくさんの事務スタッフがいます。背広組の人たちです。その人たちと自衛官である制服組の人たちの間では、当然せめぎ合いがあると思います。こうした意味では、アメリカはむしろ、制服組の人たちがどんどん政策中枢に入っていくので、その部分で日本と質が違うと思います。

―― なるほど。

小野寺 その一方...
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