●足を動かすことで自衛隊員のモチベーションを向上させる
―― 小野寺先生は防衛大臣時代、歴代大臣が今まで誰も行かなかった基地を、休みの日などに順番に回ってらっしゃいました。そのような地道な努力がものすごい共感を呼びました。
小野寺 歴代大臣は、だいたい近場で大きな部隊のところに視察に行かれると聞いていました。そこで私は、なるべく遠くて、行きにくく、小さい部隊があるところに出向き、一生懸命回って「皆さんがやっている仕事は国のために役立っているのだ」という事実をお伝えし、激励していました。
例えば、離島の山の上に、レーダーサイトで24時間365日常に監視するため、不便な生活を続けている部隊もあります。ですが、この部隊がなければ、北朝鮮のミサイルを防衛することもできません。こうした場所をしっかり回って激励するということが、ある面では指揮官の重要な仕事なのです。モチベーションを高めるには、やはり「皆さんがやっている仕事は日本のためになっているのだ」ということを私が十分に認識し、感謝していることを伝えるのが大事だと思います。そうすれば士気を上げることができるのではないでしょうか。士気を上げることも指揮官の重要な仕事です。
例えば、航空自衛隊のレーダーサイトであれば、私が出向くと航空幕僚長という航空自衛隊のトップが必ず同行します。個々の部隊の隊員たちは、こうしたトップの人間にも会ったことがありません。また、その地域の航空自衛隊トップも同行しますが、彼らはその人物にさえ会ったことがないのです。つまり私が出向くことで、こうした普段見たことない人たちが一気についてくることになります。そして逆に、こうして同行するトップたちには、「私が行く前に今度はあなたたちが、こうした部隊を回って激励してほしい」と伝えます。
●防衛省で「五族協和を目指す」といわれる理由
―― そのような地道な努力による共感がないと、自衛隊のような20数万人の大きい組織を変えてくことはできないということですね。しかも陸海空があり、さらにその中で出身母体である専門分野に分かれているわけですから、それら全員を束ねていくのは、そうした共感があって初めてできるのではないでしょうか。
小野寺 自衛隊について、面白い見方があります。これは同時に防衛省の難しいところでもあるのですが、よく「五族協和を目指す」といわれ...