●高校における教育改革のポイントは3点ある
今回の教育改革である高大接続改革は、3つのパートで成り立っています。1つ目が、高等教育の改革、2つ目が大学教育の改革、そして3つ目がそれをつなぐ入学者選抜の改革です。
まずは、高校教育の改革から見ていきたいと思います。次期学習指導要領の改訂の方向性についてです。
高校における教育改革のポイントは3点あります。1つ目は、教育課程を見直して高校の学習指導要領を改訂するということです。これは2022年度から始まります。新しい時代に必要となる資質能力の育成を目指して、必修科目等の見直しが行われます。2つ目は、学習指導方法の改善と教員の指導力の向上です。「学力の3要素」を育成するために、先生方の教え方も変わってくるということが言われています。3つ目は、多面的な評価の充実です。「学力の3要素」を育成するためには、その学んだことを評価する方法も変えていかなければなりません。そのため、調査書等の見直しが求められています。
これが全体像です。1つ目が教育課程の見直し、2つ目が学習指導方法の改善と教員の指導力向上、3つ目が多面的な評価の推進です。この3点についてご説明したいと思います。主に1と3を中心にお話しします。
●教育課程改革の中核には「学力の3要素」の育成がある
まず1番目の、教育課程の見直しです。次の高校の学習指導要領の改訂ですが、これまでは「何を学ぶか」いうところに重点が置かれていました。今回の学習指導要領改訂のポイントは、「何ができるようになるのか」ということです。つまり、新しい時代に必要な資質・能力が見直され、「学力の3要素」をどのように育成し、身につけていくかが重要になってくるのです。これは日本だけではなく、OECDなどの世界でも、「21世紀型のスキル」「21世紀型のコンピテンシー」として、資質・能力の見直しが行われています。
その次に「何を学ぶか」ということで、このような資質・能力を身につけるために、どのように教科・科目を見直していくかが検討されています。そして3つ目は、「どのように学ぶか」ということで、アクティブラーニングの視点からの学習課程の改善です。主体的で対話的で深い学びが提唱されています。
そして、この学習指導要領の改訂の第1章に書かれていたのが、「2030年の社会と子ども達の未来」というものです。この新しい学習指導要領で学ぶのは、2019年時点での中学1年生です。その子たちが大学を卒業するのが2029年です。そのため、そのときの社会を予想しながら、そこからバックキャストで教育を変えていくことが目指されています。
●課題発見と課題解決の力を身につける
「何ができるようになるのか」については、「学力の3要素」の観点から見直しが行われ、「自ら問いを立てて解決できる人間を育成しよう」と書かれています。これには大きく2つあります。自ら問いを立てるという課題発見、そして自ら解決できるという課題解決です。
そして、「何を学ぶか」については、高校の教科・科目が大きく変わります。例えば18歳から選挙権が得られるので、「公共」という科目や、新しい時代に対応した「プログラミング」「情報」が加えられていきます。この資料の中で、黄色が共通必修、選択必修、青が選択科目です。
●俯瞰的な総合、探究学習、言語
いろいろと変わるのですが、私から見て、こうした教科・科目の変更については、大きく3つのポイントがあると考えています。1つ目は総合型・統合型です。「日本史」「世界史」ではなく、「地理総合」「歴史総合」という必修科目名になっています。どういうことかというと、これまでのように、「室町幕府の第12代将軍は誰で、何年に征夷大将軍になったか」ということを覚えるのではなく、「日宋貿易をやっていた時のヨーロッパはどのような状況だったのか」というように、俯瞰的に物事を見て、総合的に考えていくということが重要視されているのです。
2つ目は探究学習です。今、「総合的な学習の時間」というものがありますが、主に進学校ではこれを受験対策に当ててしまっています。そもそも「総合的な学習」とは、教科・科目に関わることを、横串を通して学ぶ場でした。それをもう一度きちんと作り直そうということが、試みられているのです。そのため、科目としては探究学習が入っています。そして選択科目履修の中には、「理数探究」がありますが、これはスーパーサイエンスハイ...