戦国合戦の真実
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戦国時代の「戦場での食事」の驚くべき工夫とは?
戦国合戦の真実(3)縁起担ぎと戦場での食事
歴史と社会
中村彰彦(作家)
日本には「縁起物」という言葉があるが、命をかける戦国の合戦においても重要視されていたという。栗、あわび、大豆、くるみ、松葉に込められた願いとは? また、合戦では食事や便通ですら戦況を左右するため、さまざまな工夫が施されており、そこから武将たちの戦いにかける強い思いが感じられる。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:9分00秒
収録日:2019年11月6日
追加日:2020年1月5日
≪全文≫

●戦当日には縁起を担ぐ


中村 戦の当日になると、朝、出撃の儀式をやる。まず、三三九度と同じように、三つ重ねの盃にお酒を注ぐ。結婚式と違うのは、必ず、三方という白木の台にきれいな和紙を敷いて、そこにその家独特の出陣の儀式に使う食べ物を載せることです。

―― 縁起物みたいなものですね。

中村 武田信玄に仕え、後に保科正之が継いで、会津藩に成長する保科家の出陣の儀式を見ますと、縁起物として、まず栗が載り、あわびが載り、大豆が載る。そこに松の葉っぱが飾ってあって、くるみもある。

 そして、主将が唱える言葉は、勝利の祈りなのですが、おまじないといってもいい。「われこの敵に勝ち栗」「この敵を打ちあわび」と勝利の祈願をする。大豆やくるみ、松葉というのは「まめに来る身を待つばかり」、つまり「無事にお帰りくださいませ」「勝ってお帰りくださいませ」ということで、留守部隊からの祈りがそうした言葉になっているのです。

 そして、いよいよ出陣するときには、何月何日、どこそこに何時までに来いというわけですけれども、絶対に遅刻は許されません。加賀前田の三代目の前田利常は、大坂の陣への出撃に際し、遅刻した馬丁に対して烈火のごとく怒りました。目の前に呼びつけて、両手を押さえさせて、腕を一本叩き切っています。

 戦の場所では、縁起の悪いことは絶対に許されない。そして、ふざけた態度がある者がいれば、満座の中で成敗して、陣の気分を引き締める。「軍神の血祭りに上げる」というのはこのことなのです。軍神というのは血が好きなので、勝利の帰還のためにも厳しい成敗をして、軍神にお見せする。そうした怖さもあるのです。


●戦のときは人工的に便秘状態をつくり出していた


中村 今度は尾籠な話になりますが、食べ物と便についてお話しします。

 米も炊くんでしょうが、当時はもち米に灰を混ぜたようなものを携帯食料としていました。今でも鹿児島あたりでは売っていますが、柔らかいのです。入れた湿気を灰で逃さないようにしてあるので、カチンカチンにならず、それを食べる。これには絶対にもち米を使うのですが、それは戦の間に便通がないように、人工的に便秘状態をつくり出しているということです。鎧というのは着てしまうと、「ちょっとタイム」ということもできなければ、一人で脱ぐこともできない。しかも、身ぐるみ剥がされる場合には、...

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