日本の特性とは何か~「日本的」の本質
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西郷隆盛の『南洲翁遺訓』から日本の特性を読み取る
日本の特性とは何か~「日本的」の本質(4)見えないものを大切にする
田口佳史(東洋思想研究家)
日本の自然、風土が育んだ安堵感、安泰感、そしてその中にある共生観が、日本人ならではの勤労観を形成していると田口佳史氏は指摘する。また、この安堵感、安泰感を深読みすれば、そこからは「目に見えないものを大切にする」ことの重要性が垣間見え、さらに天を相手に己を尽くすという西郷隆盛の精神にたどり着く。(全7話中第4話)
時間:13分37秒
収録日:2020年1月8日
追加日:2020年5月20日
≪全文≫

●復員船の記録に見る日本人の伝統的企業観


 私は若い頃、復員船というものの記録に非常に興味があって、復員船の記録について映画のドキュメンタリーのような形のものを作ったことがあるんです。それで舞鶴へずっと通っていたことがあるのですが、当時そこには厚生省の復員局の生き残りがまだたくさんいて、その人にいろんなことを伺ったんです。

 非常に印象深いことですが、本来なら舞鶴へ帰ってくるところを、多くの人はいつ帰ってくるか分からない。必ず「帰りますから」なんていうことではないわけですから。いつ帰ってくるか分からないから、波止場でいつも、主人が帰ってくるんじゃないか、お父さんが帰ってくるんじゃないかと、じっと待っている。そういう人もいるんですが、ほとんどの人は生活をしなければいけないから、そんなところまで来ないわけです。

 復員船が着いて、ぞろぞろぞろぞろと戦地から帰ってくるんだけど、要するにそこには誰もいないのです。そこで、そこから自分の故郷へ帰るというときに、復員名簿というものを作らなきゃいけないから、1人1人前に座ってもらって、そこに書くわけですが、「これからどちらへ?」と聞くと、多くの人がこう言ったというんです。「まず、会社へ行ってみたい」。自分が勤めていた会社へ訪ねていって、それから自分の家へということです。そこで、「自分の家へ先に行くんじゃないんですか」と尋ねると、「いや、まず会社というものがどうなってるか気になるから、会社へ行ってから」と答えるというのです。

 これは何を表しているのかというと、安堵感、安泰感の基本が企業にある、つまり自分の勤めている会社にあるということです。私は、日本人の伝統的企業観には会社から得ている安堵感、安泰感がものすごく強くあって、これこそが明治のお雇い外国人が「こんな勤勉な人たちはいない」といったことに表れているのですが、勤勉な労働姿勢というものの一端はそこにあるんじゃないかと思っているんです。


●自然が育んだ安堵感や共生観が日本人の勤労の根っこ


 そういう意味で、安堵感とか安泰感というものには、われわれが自然から得ている優しさとか、何かわれわれを育んでくれているようなもの、つまり、私はあまり好きな言葉じゃないけど、現代の皆さんが使っている「癒し」というようなものもあるんじゃないか。だから、そういう観点で、安住の地と...

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