●海外の異文化とつきあうとき、日本の特性をどう考えればいいか
田口 今回のシリーズでは、なぜ日本的というものが必要なのかということで、日本の転換期の在り方と、それから日本的というものの意味合い、そのスタートの概念、また持っていただきたい知識などについてお話をしました。何かご質問があればお答えしたいと思っています。
―― 日本の特性である「安堵感」「鋭い感性と深い精神性」は本当に素晴らしい。一方、海外の異文化と向き合うとき、そこがお人好しのような感じで出てしまい、弱点になってしまうのでは。海外の政治や経済を見ると、腹黒くて普通というところもあるからです。先生はどうお考えでしょうか。
田口 横井小楠は、次のように言っているんですよね。当時、西洋列強がものすごい軍事力で日本に、というよりアジアにどんどん攻めてきた。あれをどう受け取るかによって全然事態は変わるんだよと。
そこで、「横井、あなたはどういうふうに受け取るのか」と聞かれた。当時、大方の日本人は攘夷思想で、要するに外国人はみんな叩き切るという、そういう非常に乱暴な、つまり人間のやることじゃないと言っているわけですよね。
そこで、われわれはどうするか。西洋が近代西洋思想を持って日本の思想、主に儒教に対して挑戦してきたんだ。どっちが勝つかやってみようじゃないかと言ってきたんだよと。したがって、われわれは儒教をもう1回整然と整備し直して、逆に西洋思想を育んでやらなきゃいけないんだと。
具体的にいうと、どういうことか。ああそうか、領土が欲しいかと。それで来たんだなと。欲しけりゃいくらでもやるけどね。要するに領土を取るというのはなかなか大変だよ。取った後がすごく大変なんだよ。それよりは、どうだ、一緒に協力して、あなたの国を世界一の富んだ国にするという、そういうことのほうが、死人も出ないし、いいんじゃないか。そこには東洋道徳、西洋技術という考え方があって、われわれは道徳を、基本のほうを提供するから、あなたのほうは技術を提供して、お互いに発展繁栄の道を、共生観を持って歩んでみたらどうかといって、西洋人を育んでやる。その気持ちがないと、争ってしまうのです。
●5つの思想・哲学、その蓄積に敵う思想・哲学はない
田口 ですから、1枚も2枚も上手になることが重要だが、そのために、その自信の発露はどこにあるかと...