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日本人がずっと持ち続けてきた「明浄正直」の心とは

日本の特性とは何か(6)明浄正直と溜まり文化

田口佳史
東洋思想研究者
情報・テキスト
日本は地理的特性として森林・山岳が多く、水に恵まれているため、「明浄正直」の心を持ち続けてきた。もう1つ、地理的特性として注目すべきは、ユーラシア大陸の東端に位置するという点だ。これによって、東アジアで生まれた思想・哲学が東へ流れて日本で溜まり、「溜まり文化」をつくったのである。その結果、神道のあった日本に儒教・仏教・道教・禅仏教が醸成されることとなった。(全7話中第6話)
時間:08:03
収録日:2020/01/08
追加日:2020/06/03
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≪全文≫

●日本の森林・山岳性が生み出した豊かな水


 もう1つ、地理的特性として森林・山岳から来るものについて考えたいと思います。

 森林は水がめです。どういうことかというと、ブナの木を1本、そこに植えておけば、周辺100メートルぐらいの樹木はいずれも潤うといわれているぐらいに水がめになっていることで、日本は水にものすごく恵まれた地域なのです。その70パーセントが山岳地帯ですよ。だから、われわれは山の民なんですよ。山岳地帯には森林がありますから、ものすごく水が豊富なんです。

 したがって、何かにつけて、「水に流そう」とかいうわけですが、「水に流そう」といったって、中国じゃあなかなか言えないんじゃないかな。どんよりとそこで停滞しているようなものをいくら水に流したって、そこで見えてしまう。日本はそういうもんじゃない。全部急流ですよ。だから清いんです。で、そういうところに太陽の光がバーッと射すとどうなるかというと、「水鏡」といって、川底までぐっと浮いて見えてくるんです。それをずっと古代からそれとともに生きてきた民が、われわれ日本人なんです。


●豊かな水から生まれた「明浄正直」の心


 そうするとどうなるのか。水は清い。水は尊い。尊いものは清いものなんだという価値観になっていくんです。だから、そういう意味で、それを「清く明けく心」ということで、「清明心」といいます。つまり、透き通っている透明性のある人間に対する表現なんです。透明性のあるリーダーでないと日本では認められないんです。腹黒いなんてまずダメなんです。本来は腹黒いぐらいの人間のほうが頼りになるんじゃないのか、なんて言いがちだけど、ダメなんです、そういう人間は。要するに、清く明けく心、清明心が大事なのです。

 さらに清明心が出てくると、「正し直し心」というものも要求されます。だから、清く明けく心と正し直し心、清明心と正直心(せいちょくしん)といい、これこそが「明浄正直(めいじょうせいちょく)」といって、重要なのは天武朝です。天武朝がなぜ重要かというと、日本という国号も、天皇という称号も、全部天武朝の時から始まったとされているからです。だから、その頃が日本の骨格をつくった時期なんです。そういう時期に、(神職の)階位の名称がこの清明心と正直心である「明浄正直」から取られたものといいます。いわば官位十二階のようなものだということです。

 この清明心と正直心こそが、前回お話しした「鋭い感性と深い精神性」とともに、日本人がずっと持ち続けてきた心です。ある種、人はその領域まで行けるかどうかという領域の探究というところにいるわけですが、その象徴として誰がいるんですかといったら、天皇です。天皇こそが清明心と正直心の持ち主、そのシンボルじゃなきゃいけないとなっているわけです。

 ということで、日本の特性としてはたくさんあるんですが、主だったところでまず地理的特性の第一としては森林・山岳・海洋・島国国家で、その中で森林・山岳を挙げると、以上のようなことになります。


●日本に溜まった5つの思想・哲学を活用する


 もう1つ、地理的特性で絶対に忘れちゃいけないのが、日本はユーラシア大陸の東の端にあるということです。そのためにで、東アジアで生まれた思想・哲学は東へ、東へと流れていき、日本に溜まったんです。

 どういうものが溜まったかというと、まず仏教です。インドで生まれた仏教、禅仏教。それから中国で生まれた儒教老荘思想。こういうものが全部、日本に溜まってくれたのです。したがって、日本には神信仰という意味での神道がまずあって、そこに仏教、禅仏教、それから儒教、道教、要するに儒・仏・道・禅が神道とともに溜まっているんです。

 日本は「溜まり文化」ですから、溜まるとどうなるかというと、発酵します。ですから、この5つもの思想・哲学が発酵しまして、発生地にはないものすごい香りと風味のいい、そういう思想・哲学になっているんです。

 このように、5つもの思想・哲学が集積しているところがこの地球上に他にありましょうか。ないでしょう。われわれはその宝を生かしていない。だから、今こそ、日本的というものを経営に生かすために、その日本的の中にこの5つもの思想・哲学を徹底的に活用するときじゃないか。私はこの知的資源をいかにこれから日本企業が生かすかということこそが最大のポイントだと、いっているわけです。
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