●感染対策で台湾とシンガポールはどこが違うのか
―― 皆さま、こんにちは。本日は小宮山宏先生の「脱コロナを『知の構造化』で考える」の講義を受けまして、同じくテンミニッツTVの副座長でいらっしゃいます曽根泰教先生とのご対談で新型コロナウイルスの問題についての議論をさらに深めていただきたいと考えております。先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
曽根先生には、本日リモートでのご参加ということでこの議論に加わっていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
曽根 はい。
―― まずは小宮山先生の新型コロナウイルスの問題についての講義をお聴きいただきまして、全体的なご感想を伺いたいのですが、いかがでしょうか。
曽根 はい。日本の場合、東京駅や大阪・梅田の映像は流れるのですが、海外でも主要国、例えばアメリカのニューヨークやイタリアの西部などの映像だけで、他のところがどうなっているのかということについては、あまり触れられていません。それについて、小宮山先生は、かなり詳細に各国の比較のためのデータを出されています。それを見てみると、見える「問題」が違ってきます。さらに見える問題が違ってくるということは、「問い」や「答え」が違ってくるということです。そうすると、そこで何を知ることができるか、答えとして何が見えるか、そこがよく分かりました。そういう意味では、知的な刺激として非常に有効だと思いました。
また、アジアの中で優秀とされた台湾とシンガポールはどこが違うのか、それも分かりました。規制のかけ方も、もちろん台湾と中国共産党では同じ中国人でも違うわけですが、台湾は中国共産党のような権威主義ではなく、公衆衛生的な面からインターネット技術、あるいはデジタル技術を有効活用し、また若干の私権制限はあるものの自発的な形でやっています。社会的隔離(ソーシャルディスタンス)もうまくいっています。
シンガポールは初期の頃はうまくいっていましたが、その後、感染者が増えました。感染者が減っている国もあるのに、なぜシンガポールは増えたのか。こういったことを丁寧に追っていくと、社会の歪みなどが見えてきて、外国人労働者の間で感染が拡がったことが分かります。寮、アパートなども、一般のシンガポール人に比べてかなり劣悪な状態であるということです。そうすると、その弱いところに感染が拡がると実際にどうなるのか。各国別に見ていくと、政治だけではなく、社会の影の部分まで見えてしまうということが分かります。
小宮山 いまの話は、非常に重要です。私も、シンガポールでは死者は増えていないものの、なぜ感染者数が増えているか、分かりませんでした。それが、今の曽根先生のお話で分かりました。新型コロナウイルスは今後、アフリカやインドなどの開発途上国にどんどん拡大していきますが、そのときの悲惨さを明確に暗示していると思います。
曽根 シンガポールの場合は、台湾に比べてレストランなどの食事の場での規制が比較的緩いのです。新型コロナウイルスは、会話だけでなく、食事の際にもうつるケースがかなり想定されています。シンガポールを見ていると、レストランやバーなどでの規制が台湾よりも比較的緩いことと、もう一つは社会構造の中の歪みの部分が、感染者が増えている要因として考えられます。一般的にシンガポールは優等生の国というイメージですから、そのようには見えないのですが、そういったことがいえると思います。
●アイスランドの特徴
小宮山 なるほど。他の国に関してはどうですか。私はこのように見ているのですが、各国が何をやったからこうなったのかという点が気になります。例えば、スイスはガバナンスがしっかりした国だと思うのですが、死亡者が増えて急激に苦戦する状況になっています。一方、オーストリア、スロベニアなどはまだ頑張っています。
ベネルクス三国では、ベルギーとオランダの致死率は高くなっていますが、ルクセンブルクは「感染者は多いが致死率は少ない」。このような差は、例えば医療体制がしっかりしているなど、その国のガバナンスの特徴によるものなのか、それとも他の医療政策、あるいは隔離政策の差なのか、あるいは風習などの文化によるものなのか。三菱総研では、政策を調べて、モデルを使って計算をしようとしているのですが、曽根先生はそのあたりの知見はどうでしょうか。
曽根 数字に関してはよく分からないところがあるのですが、例えば、先ほどの講義でご指摘されたオーストラリア、ニュージーランド、台湾、日本はいわゆる「島国」で、国境を接していません。
小宮山 アイスランドもそうですね。
曽根 他国と国境を接していない国は、比較的管理しやすいという一般的な特徴があります。
非常に興味ある事例として、アイス...