●台湾が新型コロナ問題にうまく対応できた要因はどこにあるのか
―― 今回の新型コロナウイルスは、「未知との遭遇」のようですね。
小原 ええ。
―― 過去に起こった問題であれば、AIで解答が引き出すことができますが、今回の問題はこれまでとは全く違い、しかも状況が刻々と変わります。ウイルスについても、武漢のウイルス、イタリアのウイルス、ニューヨークのウイルスで、おそらく進化の度合がそれぞれ違うだろうといわれています。しかも、第二波、第三波という感じで再び戻ってくるかもしれません。
その中で、中国とものすごく距離が近く、行き来が一番あった台湾が、今回は非常にうまく封じ込めを行いました。これは37歳の天才的なIT担当大臣や衛生福利部長(日本の厚生労働大臣に相当)の存在が大きいのでしょうか。中国への行き来も多いので、情報が入っていたということもあるのだと思うのですが、台湾がうまくいった要因は、どのように総括できるのでしょうか。
小原 台湾は、ある意味で中国をものすごく意識していると思います。国際政治的に起きているのは、パワーバランスの変化です。習近平国家主席は、明らかにアメリカとの覇権争い等、国際的なパワーバランスの転換を模索しています。特に台湾海峡をめぐっては、今や中国はアメリカがバックアップする台湾の軍事力を圧倒しており、かなり優位に立っています。そうした中で、習近平氏は2019年1月の年頭スピーチでも、いまだに武力による統一を捨てていないことを強調しました。そのため、中国は独立志向のある台湾の民進党(民主進歩党)政権に圧力を加えています。
一方で台湾側は、中国とは違った自分たちのレジリエンスを模索しています。中国で何が起きているのかをよく見ながら、生き残り戦略を考えているのです。
コロナ問題は、そうした中で生じました。そのため台湾は、コロナに対して中国がどのような対応を取ってきたのかを徹底して観察していると思います。その意味で、蔡英文氏はやはり非常にスマートでした。要するに、台湾では中国のような感染の拡大を絶対に起こさないために、いろいろな配置をしたのです。
特に今おっしゃったように、枢要なポストに能力や経験のある人をすぐに配置して、それによって迅速にオペレーションを展開したことが、成功の要因だと思います。こうしたとき、リーダーにとって難しいこととし...