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《2.シナリオB:迅速・大型政策対応と感染・経済コスト》
【迅速・大型・徹底政策で新型コロナウイルス感染を早期収束、2021年に向けて経済V字型回復をはかる対応のシナリオ化】
【その特徴は以下】
(1) 迅速な政策決定とその果敢な実施
◆危機対応で何よりも問われるのはスピード。政策が遅れることは問題への対処が遅れ、必要な対策を打つべき貴重な時間が失われる。緊急経済対策の構想から実現まで2カ月の時間の浪費、改正特措法が成立してから緊急事態宣言発令まで4週間を要した遅れ、また緊急事態宣言発令から休業要請まで2週間様子を見るとした政府対策本部の考え方などは大いに反省すべき。
◆所得補償を決断しないままに休業要請をしても負担はもっぱら経営基盤の弱い小零細企業にしわ寄せされ、休業は徹底しにくい。休業要請は所得補償とセットで果敢に実施すべき。
◆これらの反省に立ち、シナリオBでは政策の迅速な決定と果敢な実行を基本とする。
(2) 感染症対策を立案し実施する本部設置
◆日本の感染症対策は、対策を立案し実行する体制が一元化されておらず、決定と実行のプロセスの権限が不明確で、対応が遅れがち、また不徹底。
〈参考〉
・日本の感染症対策はこれまで厚労省下の国立感染症研究所が主に担ってきた。感染研の業務の中心は研究で、知見は示すが、対策の策定や実行権限はない。
・今回、新型コロナウイルス対応で、臨時組織を次々と立ち上げて対応。1月末に政府対策本部を設置したときは根拠法もなし。2月に同本部に専門家会議を設置、感染研の所長を座長に。
・法的根拠ができたのは3月26日。改正特措法成立を受け同法にもとづく対策本部とした。緊急事態宣言の是非を評価する諮問委員会もつくった。
・感染研は、予算と人員、法の制約あり。平時は機能しても今回のような“戦時”では十分に対策をとるのは困難。
◆韓国:「疾病管理本部」省庁級で常設。
◆台湾:中央感染症指揮センターが臨時政府のような強大な権限を掌握。
◆アメリカ:US厚生省傘下の疾病対策センター(CDC)も強い権限。
◆日本の感染症対策の専門最高機関は「国立感染症研究所」だが、この機能を生かし、単に厚生労働省の焼け太りにならないよう留意して、対策策定と実行の権限を持つ強力な機関を設立すべきではないか。
(3) 旧習にとらわれない徹底的な感染検査と国民の状況把握
◆日本の伝統的感染抑制法は伝統的に感染経路からクラスターを究明し、その拡大を防ぐ方法で感染規模が比較的小さい場合は良く機能するが、コロナウイルス感染のように大規模になると機能しにくい。
◆感染検査を多くの国民に徹底して第2波、第3波に備えることが必要。そのためには、これまでのように検査は公的専門検査機関だけでなく、広く地方自治体、医師会、大学、民間企業も総動員し、日本と世界の新技術も大いに取り入れて国民全員の状況把握をめざす。
(4) 緊急経済対策:必要な対象に重点的効果的支援
◆緊急経済対策は、感染抑制策によって休業が要請され、その間、事業所得を失う多くの小零細事業者の機会所得の補償と、同時に所得が急減もしくは失業する労働者の喪失所得を補填する所得補償が主眼なので、一律給付でなく最も支援を必要とする事業者や勤労者への重点支援が基本。
◆シナリオAでは重点給付の実行には実務的困難があったので、一律給付となった。
◆最も支援を必要とする事業や労働者に重点給付をするには、せっかくつくった「マイナンバー制度」に就労、所得、資産状況など個人情報を接続して活用すれば迅速・効率的に重点的給付は可能になる。
(5) コロナ後の新しい経済システム構想とその実現
◆コロナパンデミックは、日本はもとより世界中の経済や社会に大きな衝撃と変化の契機を与えている。
◆世界諸国はこれまで自粛と規制の解除を模索しはじめているが、それが感染の再発を誘引しないとはかぎらない。また、ワクチンの開発・普及などによって、今のコロナ禍が克服されたとしても新たなウイルスパンデミックがまた襲来しないとはかぎらない。専門家会議副座長の尾身茂氏の言葉を借りればコロナとは”長丁場”のつきあいと覚悟する必要がある。
◆専門家会議はそのために「新たな生活様式」を提案したが、本質的な課題は、「ウイルス感染の流行に負けない新たな経済社会システムづくり」だ。人々の接触や移動なしに持続し、発展できる経済システムを構想し実現することだ。
◆その大きな手がかりは“情報と通信”の活用にある。今回のコロナ禍で、私たちはリモートオフィス、オンライン教育、画像の活用などを経験した。今、求められるのは、その経験を生かして、日本中の組織や家庭に高度な通信環境を整備し、産業、教育、医療、娯楽、アートなどが人々の接触と移動なしに、これまで以上に実現できる経済社会システムを構想することだ。
◆準備し実...


