テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

ベッド数は多くても医師数などが圧倒的に不足している日本

徹底検証・日本のコロナ対策(6)医療崩壊は防げるか

島田晴雄
東京都公立大学法人理事長/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
イタリアなど各国の事例から、医療崩壊の危険性が大いに指摘された。医療崩壊を起こしてしまうと、死亡率は爆発的に高まってしまうからだ。イタリアはベッド数不足で医療崩壊を引き起こしてしまったが、日本は人口1000人あたりのベッド数そのものは多かった。しかし圧倒的に足りないのが医師の数など医療サービスなのである。なぜ日本は、ベッド数は多いのに医師数が少ないのか。医師数が少ない結果、今般のコロナ禍でどのようなことが起きたのか。さらに「接触8割削減」や「Stay Home習慣」とはいかなるものだったのか。振り返って検証する。
(本講義では、島田晴雄先生が作成されたレジュメ内容を本文として掲載いたします。そのため、一部、動画では触れられていない部分もありますが、資料としてご活用いただければ幸いです)(全9話中第6話)
時間:09:42
収録日:2020/05/19
追加日:2020/05/23
≪全文≫
《6.医療崩壊は防げるか》
【はじまった医療崩壊】
◆感染者の増加ペースが高まるにつれて、当初、「感染症法」(感染症の予防及感染症の患者に対する医療に関する法律、1999年4月1日施行)の規定で、感染者は軽症であっても入院させねばならなかったため、医療崩壊が大いに懸念された。
◆それでなくても病院は通常の多くの患者に対する医療提供で手一杯の状況であるため、医療の供給能力を超える“医療崩壊”現象が始まっている。医師、看護師、コメディカルスタッフの能力の限界が多くの医療施設で指摘されている。
◆日本医師会は4月1日、「医療危機的状況宣言」を発出。

【ベッド数は多くても医療サービスが不足】
◆日本の病院はベッド数そのものは多い。イタリアのようにベッド数不足で医療崩壊が起きる状況ではない。
◆人口1000人あたりのベッド数は、たとえばドイツ8.2、フランス6.2、イギリス7.1、アメリカは少なく2.9であるのに対して、日本は13.2(OECD調査、2016年)。
◆足りないのは医師。ベッド100あたりの医師数は、ドイツ49.9、フランス53.8、イギリス102.4、アメリカ88.6に比べ、日本は17.9と極端に少ない。
◆日本は1960年に国民皆医療、皆保険制度を実現したが、それを本当に担う医療サービスの体力がなく、いたずらにベッド数を増やして入院日数を伸ばすなかで、なんとか対応してきた経緯がある。
◆「日本は地域医療構想見直しで、病床の機能区分で過剰を抑制する計画をつくる段階でまだ動いていなかったので、なんとかなった」(横倉義武 日本医師会会長)。
◆足りないのは病床ではなく、医師、看護師、医療スタッフなど人材。彼らの過酷な勤務状態が、医療崩壊につながる。

【外電記者(Robin Harding)による欠陥指摘(『Financial Times』2020年5月7日)】
◆コロナ感染疑いの患者、引受病院探すのに数時間、40km。
◆多くの病院、設備や資材が整わないので、特にICUに感染患者引き受けに二の足。
◆感染患者、退院まで2度陰性検査結果必要、1カ月の在院も。
◆日本はベッド数は多いのに、その活用は極めて非効率。事実上の医療崩壊現象。

【防護具、機材、薬剤の不足、過少な感染テスト】
◆院内感染が各所で起きているが、感染防護マスク、アイソレーションガウン、フェースシールドなどの器材や薬剤不足も一因。これらの大半は中国など海外に依存していた。
◆PCRなどの感染テストが、韓国やドイツなどに比べて非常に少ない日本の状況の背景要因については上述。
◆これらはいずれも克服できない問題ではない。

【医療崩壊を防ぐ方策】
◆以上をふまえると、医療崩壊を防ぐ方策が見えてくる。
(1)医療人材の強化。長期的には医療人材の育成を大規模に推進すべきだが、今は現有の人材が過度な労働強化にならないよう、配置、編成、労働環境を整備。また、彼らに社会が感謝し、偏見、中傷などは厳につつしむことが肝要。
(2)防護具、機材、薬剤など、これまでの輸入偏重を改め、国産化を強く推進。
(3)PCRテストは、ドライブスルーの促進、規制を撤廃し民間企業活用推進。

【感染のピークを低位に抑えることが最大の方策】
◆最大の対策は、イタリアやアメリカNYのような感染爆発を避けるため感染者増加のピークを低く抑えつづけること。爆発で感染者数が医療の能力を超えると、医療崩壊と爆発の悪循環が起きて制御不能になる。


《7.ゴールデンウィークを“Stay Home Week”に》
【小池流アピール戦術】
◆流行語づくりの名手、小池都知事は5月のゴールデンウィークが爆発を未然に防ぐ正念場と位置づけ、命を守る“Stay Home週間”と名づけた。このキャッチワードが全国の合言葉となり、4月25日~26日の週末は都市の盛り場や観光地で明らかに人出が減った。
◆知事はスーパーでの買い物も3日に1度にするように、など細かい要請を重ねている。
◆知事の強い呼びかけ以降、東京都では一時は200人を超えた1日の新規感染者増が5月中旬は10人前後で推移。感染者増加のペースがやや鈍化したことは確か。

【接触8割削減の呼びかけ】
◆感染者数の増加が加速し始めた4月以降、安倍首相はじめ感染対策関係者は、人との接触を8割減らすよう繰りかえし訴えた。
◆「8割削減」の根拠は、政府専門家会議メンバーで感染者数の予測を数理モデルで解析している北海道大学の西浦博教授の計算した数字。8割減達成すれば、1カ月で収束。7割だと2カ月。6割だと収束しないという。西浦教授は巷では“8割オジサン”の異名。

【国民の理解と自粛に期待する日本型の実験】
◆日本が今やろうとしていることは、都市封鎖も罰則をともなう外出規制も強制休業もなしに、自粛と補償なし要請で人々の行動パターンを変え、感染爆発を防ごうという挑戦。欧米や中国とは異なる日本型の実験。
◆これまでのところ、感染者数、死亡者数とも国際的にははるかに少数で済...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。