躍進するインドIT産業の可能性と課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ネルー・ガンディー王朝の栄枯盛衰に見るインドの複雑な歴史
躍進するインドIT産業の可能性と課題(6)ネルー一族による統治
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
ネルー首相のもとイギリス植民地からの独立を達成したインドだったが、その前途は多難であった。ネルーは冷戦構造の中で非同盟主義を取り、毛沢東やスカルノなどとともに、米ソの調停役を果たすという理想を持っていたが、中国政府のチベット侵攻によってその理想が崩れ去った。彼の死後、娘のインディラ・ガンジーは社会主義的な政策を取り、第3次印パ戦争に勝利するなどして国民の人気を博したが、議会を経由せず直接国民に訴えかける政治姿勢はインド政治の混乱を招いた。彼女と彼女の息子で首相を務めたラジブは民族・宗教問題がらみで暗殺されている。(全8話中第6話)
時間:10分42秒
収録日:2020年4月7日
追加日:2020年7月10日
≪全文≫

●ネルー首相から娘のインディラ・ガンジーへのシフト


 ネルー首相は政教分離と社会主義の方針を明確に打ち出しました。国民会議派の得票は45パーセントでしたが、他にたくさんの党があるのでこの結果は圧倒的多数でした。この状況がその後数十年継続します。ネルー首相は、新国家構想の中核に計画経済を掲げ、そのために国家計画委員会を作りました。そして、1927年というかなり早い段階でソ連を訪問しています。この体制こそが人々を幸せにする体制だと思い、社会主義国家の建設を目指しました。ソ連と同様に重工業と軍備を強化して、強い国になることを目指しました。独立後、ソ連にならって、国家計画委員会を60年以上も維持していました。先ほど指摘したように、モディ首相はそれを最初から無視してしまったのです。

 ネルー首相は非同盟主義を取りました。第二次大戦後、冷戦構造が世界を支配した文脈では、非同盟主義はソ連に傾いた態度で、アメリカの掲げるパクス・アメリカーナと距離を置くという意味です。ネルー首相は世界的にも有名な政治家になったので、同様に大きな影響力を持っていた毛沢東やスカルノなどの人々とともに、米ソの調停役を果たすという理想を持っていました。ところが、その理想は1959年の中国政府によるチベット侵略によって崩れ去りました。その結果、チベットの宗教指導者、ダライ・ラマ14世が、数千人の難民と共にインドに亡命しました。インド政府は修道場を今でも提供しています。

 そして、社会主義計画経済があまりうまく機能しなかったために多くの批判を受けたネルー首相は、失意の中で1964年5月に亡くなりました。

 その後、シャーストリー氏が後を継ぎましたが、この人も短命ですぐ亡くなりました。結局、ネルーの一人娘であったインディラに白羽の矢が立ったのです。

 インディラは、早くに妻を亡くした父親のネルーのために、官邸で身の回りの世話をしていました。シャーストリー内閣でも大臣を務めていました。その頃、夫のフィーローズ・ガンジーを亡くしました。彼との間には、2人の子どもがいました。ガンジー王朝といいますが、マハトマ・ガンジーとはゆかりはありません。インディラの夫がガンジーという苗字だったというだけです。


●15年にわたって続いたインディラ政権の功罪


 着任早々、大旱魃に伴う食糧不足という重大な危機が起こりました。インディ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子