躍進するインドIT産業の可能性と課題
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ネルー・ガンディー王朝の栄枯盛衰に見るインドの複雑な歴史
躍進するインドIT産業の可能性と課題(6)ネルー一族による統治
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
ネルー首相のもとイギリス植民地からの独立を達成したインドだったが、その前途は多難であった。ネルーは冷戦構造の中で非同盟主義を取り、毛沢東やスカルノなどとともに、米ソの調停役を果たすという理想を持っていたが、中国政府のチベット侵攻によってその理想が崩れ去った。彼の死後、娘のインディラ・ガンジーは社会主義的な政策を取り、第3次印パ戦争に勝利するなどして国民の人気を博したが、議会を経由せず直接国民に訴えかける政治姿勢はインド政治の混乱を招いた。彼女と彼女の息子で首相を務めたラジブは民族・宗教問題がらみで暗殺されている。(全8話中第6話)
時間:10分42秒
収録日:2020年4月7日
追加日:2020年7月10日
≪全文≫

●ネルー首相から娘のインディラ・ガンジーへのシフト


 ネルー首相は政教分離と社会主義の方針を明確に打ち出しました。国民会議派の得票は45パーセントでしたが、他にたくさんの党があるのでこの結果は圧倒的多数でした。この状況がその後数十年継続します。ネルー首相は、新国家構想の中核に計画経済を掲げ、そのために国家計画委員会を作りました。そして、1927年というかなり早い段階でソ連を訪問しています。この体制こそが人々を幸せにする体制だと思い、社会主義国家の建設を目指しました。ソ連と同様に重工業と軍備を強化して、強い国になることを目指しました。独立後、ソ連にならって、国家計画委員会を60年以上も維持していました。先ほど指摘したように、モディ首相はそれを最初から無視してしまったのです。

 ネルー首相は非同盟主義を取りました。第二次大戦後、冷戦構造が世界を支配した文脈では、非同盟主義はソ連に傾いた態度で、アメリカの掲げるパクス・アメリカーナと距離を置くという意味です。ネルー首相は世界的にも有名な政治家になったので、同様に大きな影響力を持っていた毛沢東やスカルノなどの人々とともに、米ソの調停役を果たすという理想を持っていました。ところが、その理想は1959年の中国政府によるチベット侵略によって崩れ去りました。その結果、チベットの宗教指導者、ダライ・ラマ14世が、数千人の難民と共にインドに亡命しました。インド政府は修道場を今でも提供しています。

 そして、社会主義計画経済があまりうまく機能しなかったために多くの批判を受けたネルー首相は、失意の中で1964年5月に亡くなりました。

 その後、シャーストリー氏が後を継ぎましたが、この人も短命ですぐ亡くなりました。結局、ネルーの一人娘であったインディラに白羽の矢が立ったのです。

 インディラは、早くに妻を亡くした父親のネルーのために、官邸で身の回りの世話をしていました。シャーストリー内閣でも大臣を務めていました。その頃、夫のフィーローズ・ガンジーを亡くしました。彼との間には、2人の子どもがいました。ガンジー王朝といいますが、マハトマ・ガンジーとはゆかりはありません。インディラの夫がガンジーという苗字だったというだけです。


●15年にわたって続いたインディラ政権の功罪


 着任早々、大旱魃に伴う食糧不足という重大な危機が起こりました。インディ...

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