●世界情勢が変わり、アラブの春から冷冬に戻った中東
「Gゼロ」ということになって、世界が多極化し、混迷化しました。先ほど世界情勢が変わったと言いましたが、何が起きてきたかというと、中国が台頭してきました。北朝鮮のミサイルも相当正確になってきました。そして、グルジア戦争が起き、アルメニアなど旧ソ連地域が大混乱です。今度、私どもはその隣のアゼルバイジャンに行くのですが、何が起きるか興味津々です。
「アラブの春」と言われましたが、大混乱となり、結局「春」ではなかったわけです。また「冷冬」に戻りました。中東で今何が起きているかというと、アメリカがサダム・フセインを始末したのはいいのですが、サダム・フセインはスンニ派です。これを始末して傀儡政権をつくったのですが、その首相のマリキさんという人はシーア派の人で、統治が相当苛烈らしいのです。オバマさんが「アメリカは世界の警察官ではない」などと言っているものですから、民族的に少数民族のクルド族とスンニ派が力を増してきて、イラクを今ほとんど分割しそうになっています。
でも、アメリカは何もしません。オバマさんには、もうそういう気がないのです。付き合いのように「300人を送ります」と言っているのですが、何を送るのかといったらアドバイザーです。国が分割しそうになって、毎日毎日殺し合いをしている中で、アドバイザーを300人送って、何ができるのでしょうか。多分アメリカ大使館を守るということなのでしょう。そんな信じられない行動に今アメリカは出ています。
●アメリカの国内問題に埋没するオバマ氏、TPP会議を欠席
オバマさんは国内問題に完全に埋没してしまっています。あの人は国民皆医療保険にしたいのです。とにかくギリギリの議会体制のところでやったのですが、中身はボロボロで、もう大批判です。
それから、財政には天井の制約条項があるものですから、アメリカは時々連邦政府が機能を停止するわけです。これがオバマさんにとっては大変で、そのことに没頭しています。とにかく、弱い者を救わなければいけない、そういうことです。
あの人は、演説はものすごく上手です。分かりやすい。ただ、友人がつくれないそうです。議会対策もほとんどちゃんとやらない。だから、ボロボロになってしまうのです。
国際社会の信頼はどうなのかというと、TPPは「絶対やってくれ」と言って、しかもハードルを高くしました。そういうことで散々苦労し、日本も入ったわけです。しかし、議会が相当勝手なことを言うのに、オバマさんはコントロールする力がないのです。なぜかというと、ファストトラック条項というものを議会から与えてもらっていないからです。ファストトラック条項とはどういうものかというと、〝Trade Promotion Authority〟というのですが、「大統領が国際協約をしたものに関して、議会はそれ以上文句を言えません」という条項のことで、オバマさんはその権能をもらっていないのです。だから、どんなに日本が努力してアグリーメントしても、議会は翌日ひっくり返すことができるのです。そんな国と誰が本気で交渉するのでしょうか。それでも放置していて、大統領選まで様子見をしているのです。
昨年の10月ですが、閣僚会議ではらちが明かないので首脳を全部集めてやろうではないかということで、バリ島にアジア地域の総理大臣、大統領が皆行ったわけです。安倍さんも出かけていきました。すると、3日前になって、オバマさんが「行けない」と言ってきたのです。それで、皆カクーンときてしまいまして、それからうまくいかないのです。
オバマさんは「世界の警察官ではない」と言っていますし、もうリベラルかもしれません。「アメリカは世界のリーダーである」という本当に強い信念と愛国心を持っているかどうか、少し疑わしいところがあります。
●シリア問題でロシアにつけ込まれるオバマ氏
オバマさんの関心は、差別問題とか人種問題とか弱者救済です。それはいいことですが、こんなことがありました。シリアが化学兵器を使用したことが、国連の報告で分かりました。オバマさんは、最初からあれは「レッドライン」だとして、もし人権に反してサリンを使ったことが明らかになれば、レッドラインだからアメリカは然るべき行動をとると言っていたのです。つまり、当然武力で鎮圧するということです。そして、国連からその報告が来ているときに、オバマさんは何をしたかというと、アメリカ大統領というのは、議会の承認を得ないで半年間軍隊を動かせる権能があるのです。それを保証されています。それにもかかわらず、オバマさんは議会に承認を求めたのです。なぜか。自分の責任を逃れるためです。「行っていいよ」と議会が言えば、「あなたたちが決めた...