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「雑菌のない世界」や「嫌なことのない組織」はつくれない

毒を食らえ(7)「消毒社会」は免疫力を失う

概要・テキスト
 昔の日本の子供たちは、たとえ破傷風のリスクがあろうと、恐れずに泥んこ遊びをしていた。また、現在、コロナ対策のために、どこもかしこも消毒をしているが、これが続いたら「免疫力」が落ちて、大変なことになりはしないか。「雑菌」「苦悩」「嫌なこと」にも有用価値があるのだ。人間の組織にしても、「嫌なことのない組織」などつくれるはずがない。それを甘受する生き方を貫くことが大切なのである。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:14:29
収録日:2020/10/13
追加日:2021/01/29
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≪全文≫

●破傷風が怖くて外で遊ばない子はいなかった


執行 自分のことが大切で人を軽蔑していれば、これまで話した世の中の不合理や親の愛などは感じられないと思います。だって愛の根本は優しさではなく、厳しさですから。親や先生の持っている厳しさのなかに愛を感じるには、やはり相手を立てる気持ちがないと駄目でしょう。

 小学生の頃には教師を馬鹿にする生徒などいませんでした。会ったこともありません。今70歳の人間が小学校の頃のことです。でも、今の小学生や中学生は、教師のことを完璧に馬鹿にしています。

―― 親も先生を尊敬してあげないからですよね。

執行 そうみたいですね。それから、今の教師は非常に優しくて甘いところがあります。ところが、ノイローゼの子供などに向かって「先生にも優しくされているんだから、そんなに嫌っちゃ駄目だよ」と言うと、「あれは優しくして、自分の点数を稼ぎたいだけなんだ」と、みんな分かっているわけです。

―― なるほど。今の子供らしいというか、そこはやはり動物の本能ですね。

執行 テレビなどの見過ぎかもしれません。だから、それは悪循環であり、教師が毒にもなれない。うちの子供が育つ時点で大変な世の中だったので、うちの子供が大人になってから「よくまともに育ったな」と思ったものです。よくぞ普通の人になったという感じでした。

―― なるほど。

執行 私の子供が小学生の頃には、すでに何もかもが子供中心の世の中でした。だから、私などは先生たちや学校から「とんでもない父親だ」と言われていました。

 私の場合はそれで通したけれども、あれだけ先生や周りから「父親はとんでもない野郎だ」と言われて育って、うちの子供は、よく普通の子になったと思います。


―― でも、それは執行先生という「毒」が子供のそばにいたからですよね。

執行 自分が「毒」になれたかどうかはちょっと分からないけれど、私の子供は私のことが大嫌いだったというから、そうなのでしょう。とにかく「父親ほど嫌いな人間はこの世にいなかった」というぐらいなので、ある程度毒物にはなっていたと思います。

―― やはり一度ぐらいはそうした時期を経ないと、なかなかまともにはならないのではないですか。目の前に敵がいないと、緊張もしないし。

執行 うん。それはそうです。

―― インドには、引きこもりなど一人もいないですよ。だって...
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