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やられたら「倍返し」。一斉に攻めて、攻め切ってしまう

営業の勝敗、キリンの教訓(6)ライバルに圧勝した背景とは

田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表
概要・テキスト
「理念の実現」へと動きだし、キリンビールの巻き返しが始まった。そうすると、当然のようにライバル会社が対抗してくる。それには、どのように立ち向かったのだろうか。キリンビールがライバル会社をもろともせずにシェアを拡大することができた、その真相とは。 (全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:20
収録日:2020/09/25
追加日:2021/03/08
≪全文≫

●営業の常識は「やられたら倍返し」


―― たとえばキリンビールのシェアを100パーセントにするということは、逆に、アサヒビールやサントリーからすると、それまで自分のビールを使ってくれていた飲み屋さんが、ある日、キリンビールに変わってしまったという局面になります。すると、当然のことながら取り返しにきたり、「あのキリンビールの店をうちにしてやろう」となったりと、お互いにそういう形でやっていくと思います。そのようなときは、どうやって戦っていくのですか?

田村 局地戦ですよね。どのように戦っていくかというと、いろいろなことやりましたが、結局、われわれは「理念」に向かっていますから、いろいろな知恵もわいてくるし、市場のこともよくわかってしまっています。そのため、さまざまな手を打てる。例えば、営業の常識として「やられたら倍返し」というものがあります。

―― やられたら倍返し。

田村 つまり、キリンの店を相手に奪われたら、その2倍の店をキリンが奪い返すのです。A社がキリンの店をひっくり返したら、必ず2倍お返しをする。これは営業として非常に効率的です。キリンの店に手を付けたら2倍の被害を受けるわけですから、相手が二度とキリンの店を奪おうとしないのです。

―― 一瞬、こちらの店が増えたと思ったら、逆転されて、さらに陣地が減ってしまうことになる。

田村 これは絶対の鉄則です。そうすると、次からはもう奪われません。
 これは恥ずかしいのであまり言っていないのですが、ビール会社の立て看板がありますね。高知にいたときに、アサヒだったか、キリンの立て看板を捨てて自社の立て看板に替えてしまう事件がありました。小さな、取るに足らない事件ですが、それを見たキリンのセールスが、その日の夜に集まり、キリンの立て看板を100枚ほど積んで、逆にライバルメーカーの立て看板を全部替えていった。「100倍返し」です。これで次からは、そういったことは起きません。そうすると今度は、どんどん攻めることができるわけです。

 これは外交など、どの世界でもそうでしょう。相手が強く出たときにこちらが引っ込んでしまうと、失敗します。また相手が弱く出たときにこちらが強く攻めてしまっても失敗します。「やられたら2倍返し」くらいがちょうどいい。すると、誰もこちらに手を出せなくなります。これは、営業の効率が非常に良くなります。

――...
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