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どんどん知恵が出て、百戦百勝になるとっておきの方法

営業の勝敗、キリンの教訓(4)お客様本位で行動する

田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表
情報・テキスト
キリンビールの売り上げを伸ばすために、現場で試行錯誤を繰り返し、ようやくたどり着いた自分たちが目指すべき理念の実現。しかし、それを社員たちに話すも、当初は理解されなかったという。田村潤氏はどのようにして社員全体に浸透させたのだろうか。その具体的経緯に迫る。 (全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:59
収録日:2020/09/25
追加日:2021/02/22
≪全文≫

●どうすれば「理念」が「腹に落ちる」のか?


田村 そのときにピンときたのが、「理念」なんですね。それまで、自分も含めて、理念などというものを考えたこともなかった。それが、キリンビールがあまりにも売れなくなってしまったので(理念を考えるようになった)。キリンの理念である「お客様本位」「品質本位」に向かって挑戦していくということは頭にありましたが、ただ、そんなものが頭にあったところで、売上は全く上がりません。理念はたんなる概念ですから。ですが、この概念と日々の営業活動が、あるときにピタッと合致したときがあった。1997年の6月ごろだったと思います。

「ああ、そうか。お客様のことを考えながら、キリンがどこでもある状態をつくり、しかも『高知のお客様を大事にする』というメッセージで活動することは、高知のお客様を幸せにすることなのだ。これがキリンの理念なのだ。キリンの理念を実現するために自分たちは仕事をするのだ」ということを発見したのです。

 そのことを、高知支店の皆に話しました。ですがそのときは、「は?」というようなもので、わかってもらえませんでした。「理念」という考えはありませんでしたから。でも、ある程度、市場で動いていましたから、しばらくしたら「腹に落ちた」と言っていました。

―― どうやったら腹に落ちるのですか。これもなかなか、「言うは易く、行うは難し」の世界になってくるかもしれないですが。

田村 メンバーにしつこく言っていました。「自分たち(が仕事をするの)は、数字を上げるため、本社からの評価を高めるためではない。お客様に喜んでもらうためだ。だからもっと多くの店を回り、キリンの商品を置かなければいけない」と。この理念を頻繁に言っていました。

―― 田村先生ご自身がおっしゃっていたのですね。

田村 逆にそれ以外のことは一切言いませんでした。
 そうすると、何カ月かすると、ずっと言われていて、社員たちはある程度回っていますから、わかってくるのです。そして、私が発見して半年ほど後に、社員たちの腹にも落ちたのです。ずっと言われ続けながら実際に現場でやってみると、「頑張ればお客さんが喜んでくれる」とわかってくる。すると、「もっとやろう」と奮い立ちます。お客様に喜んでもらうとうれしいので、頑張ることができる。そうすると「これが田村の言っている経営理念なのだ」と腹に落ちた。そこから意識が変わったと(当時の高知支店のメンバーたちは)言っていました。

―― お客さんに喜んでもらうとは、例えば飲み屋さんに行ったときに面白い反応がかえってきたということでしょうか。具体的にはどういうような事例がありましたか。

田村 キリンの商品が売れなくなったので、いろいろとお願いにあがるのですが、聞いてくれません。かつて売れていた会社が凋落すると、やはりダメなのです。

 それでも聞くしかないので、ひたすら尋ねていました。優秀なセールスほど聞いていました。「このままいくとキリンがつぶれてしまうのですが、どうしたらいいでしょうか」と。

「聞く」という行為はお金がかからないので、意外と効率的なのです。返ってきた答えに「なるほど」と思えばそれをやればいい。いい加減なことも言われますから、それは放っておけばいい。ただ10言われたら2つぐらいは「なるほど」というものがあります。

 例えば、キリンのポスターが大きすぎる、ポスターの文字が多すぎる、テーブルテントというテーブルの上に置く販促物が大きすぎる、といったことがあります。そこで「なるほど」と思い、小さいポスターを作って持って行くと、店側は喜んでくれるのです。

―― お店からしたら、貼りやすいとか場所を取りやすいということですね。

田村 そして、「そのポスターをほかに貼ったら、とても評判が良かった。本当に大将のおかげです」と言い添える。そうすると、「今度、新しい店を出すから、キリンにしてやる」と言われたりする。または、その大将から「キリンが頑張っているから、仲間にキリンにしたらいいと言っておいたぞ」と言われることもある。そして、そのお店を教えてもらい、実際に行ってみる。そういったことの繰り返しです。

 そうやっているうちに、社員はうれしくなってくる。もっと回ろう、もっと効率的にお客様に喜んでもらおう、そのための工夫が次々と出てきます。

 高知の全県民を喜んでもらうためには、自分一人が頑張ってもダメです。そのため、もし隣の人間が何かに悩んでいたら、必ずサポートに入ってフォローするといったこともやり出して、チームになっていった。これも「理念」に向かったからだと思うのです。

 そういうことをやりながら、「こういうやり方のほうがいいぞ」という知恵が出てくる。(たとえば)どうもキャンペーンが伝わっていない。店...
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