企業改革の核心は何か
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
縦割り打破!「スモール・イズ・ビューティフル」の組織論
企業改革の核心は何か(2)組織改革のポイント
三枝匡(株式会社ミスミグループ本社名誉会長、第2期創業者)
ターンアラウンド・スペシャリスト(事業再生専門家)である三枝匡氏に、その著書『V字回復の経営(増補改訂版)』の内容を中心に、企業改革の核心を聞く講義シリーズ。第2話では、なぜ日本企業の経営力が落ちてしまったのかについて検討し、エリートに足かせをはめてしまった日本の失敗に迫る。また、改革するための組織論とは何かについて「創って、作って、売る」という考え方を軸としつつ、解き明かしていく。(全2話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11分23秒
収録日:2020年11月9日
追加日:2021年2月24日
≪全文≫

●エリートの実情を無視した働き方改革は「亡国の論理」


―― 「日本で何が一番不足しているかといえば、経営者人材だ」という(三枝さんがこれまでなされてきた)ご指摘は、まさにその通りです。バブル崩壊前から、もう実は経営者人材を育てる手法がなかったのだ、ということですね。

三枝 世界で戦っていくのに十分に伸びていった時代がずっと続きました。そしてその後、バブルですごくリッチになって、アメリカ人からうらやましがられるような経済状況が出てきました。「日本がすごい、すごい」と言われ続けて、日本人自身が本当にそういう論理を信じてしまった部分もあった。「日本の弱さ」というものの認識がなかったですよね。

(その当時)日本人がどんな仕事をしていたのかといえば、猛烈に頑張るのです、夜遅くまで。強烈に頑張るのだけれども、ものが決まらない。ものが決まらないのですが、アメリカ人よりも2倍くらい働くものだから、2倍遅くやっても、かなり早くできる。

―― なるほど。2倍遅くやっても、2倍以上働いてるから。

三枝 物量で日本人は完全に勝っていましたから。労働の物量でね。こっちが倍働いたら、それはアメリカに対抗できますよ。だから日本の最大の武器は、やっぱりハードワークだったのです。

 ところが、バブルがはじけて、日米交渉の中での労働省の交渉だったと思いますけれども、「日本人の働き過ぎを是正しなければいけない」とプレッシャーがかかった。そこで労働省が譲歩して、「では、働かせないように休みを増やしましょう」ということで(休みを)増やしたんですよ。

 日本人のみんなが、「日本人は働き者で勤勉な国民だ」と、もしかすると今でも思っているのではないかと思います。ところが、最近の数字を見ていないのでわからないのですが、1990年代前半に、アメリカ人の平均労働時間と日本人の平均労働時間が逆転しているのです。つまり、日本人が働き者だなんていうのはね、もうとっくに嘘になっている。

 だから、今の働き方改革が始まったときに、私は「これは亡国の論理だ」と思いました。アメリカで時間給などで働いているような人たちと、いわゆるエリート層とを一緒くたにしてしまっている。

(アメリカの)エリート層が時間で働いているかといえば、ベンチャー経営者にせよ、何かの研究者にせよ、彼らは決まった労働時間なんかなしに、いくらでも...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
イーロン・マスクの成功哲学(1)マスクが「世界一」になるまで
イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴
桑原晃弥
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一