豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
戦国に学ぶ組織存続の分かれ目は「異見」を聞けるかどうか
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(5)リーダーの役割
小和田哲男(静岡大学名誉教授/文学博士)
リーダーは組織を牽引するだけが仕事ではない。部下の「異見」を聞く耳を持つこと、自由にものを言える空気をつくること、結束して事に当たることなど、リーダーの力量にかかってくるところは多い。簡単ではないが、戦国の歴史を学ぶ意義は大きい。(全5話中第5話)
インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分02秒
収録日:2020年11月10日
追加日:2021年5月2日
≪全文≫

●部下からの「異見」が組織存続の分かれ目


―― 前回のお話では、上からする「たすき掛け人事」のような、補佐役についても後継人材を育てていくこと。さらに上になればなるほど、自らのブレーントラストとして、多彩な人々を交えた知の集団をつくっていくことの重要性を、教えていただきました。

 逆に、下の補佐役的な立場の人から、豊臣秀長の成功例や石田三成の例を見たときに、こういう人たちはどういう形で仕えていけばよろしいものなのでしょうか。

小和田 ひと言でいうなら、「五奉行」といわれたような人たちが、秀吉に「異見」が言えるような関係を持てていれば、まだ違ったと思いますね。「イケン」というのは、今は意味する「意」に「見る」の字を書きますが、昔は「異なる」に「見る」の字で、「異見(イケン)」と読んだ。だから、「殿、これは違いますよ」と言える人がどれだけ配下にいるか。それによって組織は永続するか、そこで終わってしまうかの、結構分かれ目になったと思います。

―― それを言える知恵といいますか。秀長の場合は3歳下の弟ですから、普通に言えたのでしょうけれども、「言う知恵」というのは何かあるものなのでしょうか。秀吉軍団に限らず、何かいい例というのは、先生、ございますか。

小和田 これは、武将たちの家訓などを見ても、「ちゃんとものを言える部下がいないと駄目」ということは、昔の人も考えています。

 有名な例では、黒田官兵衛の息子の黒田長政が月に3回、家臣の意見を聞く会を開いた。普通は、例えば足軽が長政に何か言うときに、直接にはなかなか言えない。足軽の組頭とか足軽大将を経て家老に伝わり、家老からようやく長政に通じるわけですが、そのあたりを気づいていた長政としては、やはり生の声を聞きたい。直に聞きたいということで、そういう会を開いたわけです。

 これなどは、非常に先見性があると思います。むしろ、下の声を汲み上げる。なにも補佐役でなくてもよく、もっと下の一兵卒でもいいわけですから、そういうものにもちゃんと聞く耳を持つということです。


●豊臣政権自滅の必然性とリーダーの役割


小和田 だから、秀吉の失敗は、最後に聞く耳を持たなくなってしまったがゆえに自滅したと、私は理解しています。

―― そうすると、やはりこれは部下の立場からはなかなか変えられるものではない。

小和田 ないですね。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子