豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係
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豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(3)組織のバランスが崩れる日
小和田哲男(静岡大学名誉教授/文学博士)
豊臣政権を一台の自動車に例えると、運転席でハンドルを握り、アクセルを踏み込むのは豊臣秀吉だが、隣の助手席にはいつもブレーキ役兼ナビゲーターとして弟・豊臣秀長がいた。そのチェック役がいなくなった政権はコントロールを失い、暴走していってしまうのである。(全5話中第3話)
インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分07秒
収録日:2020年11月10日
追加日:2021年4月18日
≪全文≫

●軍師と補佐役の機能的すみ分け


―― 前回、軍師の役割として黒田官兵衛のお話が出ましたが、その前には竹中半兵衛という軍師がいました。機能的に分けていくと、それぞれどんな機能で回っていたのでしょう。軍師役という存在がいて、補佐役として秀長がいるのであれば、どのあたりを主に秀長が見ていたのか。彼らの違いについては、どうご覧になりますか。

小和田 これは、やはり時代によって違うと思うのですね。「豊臣政権」という形で、ある程度全国政権的なものに近づいた時点では、戦いのほうはむしろ黒田官兵衛たち軍師クラスに作戦立案をさせ、秀長は内政面、つまりその後の領内経営のトップにいるような形でした。

 これも有名な話で『大友文書』に入っているのですが、大友宗麟が秀吉のもとにある依頼をしにやってきた時、「内々のことは千利休に相談しろ。政治向きのことに関しては俺(秀長)に相談しろ」といった言い方をしていたということです。そういった意味では、もう完全に秀吉の分身のような形で、秀吉の意を体していろいろ動いていたのが分かりますね。

―― そうすると、人事面を見ていたということもありましたけれども、対外的な部分でも、どう評価するかとか、どういう褒美なりを渡すかということに関しても、ある程度は秀長が管理をしていたということですか。

小和田 そうでしょうね。ただ、そのへんはあまり資料としては残っていません。「知行充行(ちぎょうあてがい)」などは、一応全部秀吉の名前で出るのです。ただ、秀吉ひとりで考えていたわけではなく、弟・秀長との相談の上で、この武将にはここで一国あげようという下相談は当然していたでしょう。しかし、表向きの歴史に残る資料としては秀吉の名前で出ますので、今までは全部秀吉がやったと思われてきた側面があります。

―― 例えば『大友文書』の中で千利休〈宗易〉の話が出てまいりましたが、彼はどういう役割を果たしていたのですか。

小和田 彼は、単なるお茶道を教えるお茶の先生ではなくて、内政顧問のような存在でした。要するに、お茶を通して利休も相当な人脈を持っているわけですよね。秀吉家臣団のなかをうまく回すような役割を、お茶を通して行っていた。だから、大友宗麟なども、ちょっと困ったことがあると利休に相談しなさいよ、といった言われ方をした。そういう側面があるのではないかと思います。


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