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中国を新たな標的としたアメリカ帝国主義時代の始まり

米国史から日本が学ぶべきもの(3)産業革命と帝国主義の始まり

神藏孝之
公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事 /松下政経塾塾長代理/テンミニッツTV論説主幹
情報・テキスト
南北戦争後のアメリカは、移民労働力を基盤に世界有数の工業国へと変貌する。この飛躍的な発展を可能にしたのは、アメリカ大陸の東部と西部を結ぶ大陸横断鉄道の開通であった。19世紀以降のアメリカは帝国主義段階へと入り、その領土を海外へと拡げていく。(全5話中第3話)
≪全文≫

●南北戦争後の驚異的な経済発展


 1800年代は、南北戦争で一回大混乱しますが、南北戦争以前のアメリカと、それ以降のアメリカは全く別の国です。1897年にマッキンリーが出るまでの間に、アメリカは別の国になります。全く違う南部と北部が一つの国になっていきます。

 国力で見ると、工業生産では1894年にすでに世界一になっています。また、人口が一番分かりやすい。1860年にペリーが日本にやってきた頃のアメリカの人口は3100万人です。江戸時代の日本の人口は3000万人くらいなので、あまり変わりません。ところが、(アメリカは)工業化で一位になることによって、1900年には7600万人まで人口が増えます。ヨーロッパ、東欧、中国など、いろいろなところから移民が集まって、人口が一気に2.5倍弱ほどになっていきます。その結果として、今のマンハッタンの原型ができました。

 財閥に関しては、モルガン財閥、スタンダードオイル、カーネギー、そしてフォードができます。この時にアメリカの最初の財閥の原型ができたのです。ある種、GAFAが誕生してくるときに結構似ているかもしれません。

 ちなみに日本は、徳川家康が関ヶ原で勝って初めて、東日本と西日本が徳川幕府のもとで一つになっていきます。(一方、アメリカは)それをさらにスピードアップして強烈にすると、南北戦争後の40年間になります。ここでは別の国になっていて、これが二回目の大きい変容です。

 これは、南北戦争前のプランテーションの様子と、この時代のことを書いた黒人奴隷のアンクルトムの物語です。南北戦争後のセントラルパシフィック鉄道によって大陸横断鉄道が3つでき、スタンダードオイルができ、マンハッタンの写真にあるようなビルが出来上がってきます。そして、フォードの工場はあっという間に1000万台ほどつくってしまいます。マンハッタンの橋にはアメリカの原型が見えます。

 原敬はなぜ私費で周遊したかったのでしょうか。自分(個人)の金で2億円ものお金を使って、半年間見に行ったのでしょうか。彼は、フォードの工場やマンハッタンの建設風景、そしてGEのラインを見たかったのです。その国の政治家に会いたかったわけではありません。大使館経由でいくと、お仕着せの政治家連中(との面会)の日程をどんどん組まれますが、彼にとってはそんなことはどうでもよかったのです。

 今のアメリカを動かしている原理、アメリカの強さとは一体何なのかを見るために、自分で(周遊の)工程を組みたかったので、私費で行きます。これが原敬の慧眼です。原敬はフランスで代理公使をやっていたので、フランス語は自由にしゃべれました。英語は、読むことしかできなかったですが、英字新聞は読めました。ここがすごいところだと思います。

 ちなみに、岩倉使節団がアメリカを見に行った1871年は、まだアメリカが南北戦争の混乱の中で、政体もしっかりしておらず、アメリカの中で見るべきものがあまりありませんでした。原敬が注目して、自分で見て調べたかったアメリカは、これから世界の最有力候補になるアメリカでした。


●鉄道網の発展と西部開拓


 この時代のインフラの要になったのは、1869年のユニオンセントラルのパシフィック鉄道です。これは、サンフランシスコからシカゴをつなぎます。それから、サザン=パシフィック鉄道が1883年にニューオリンズからロサンゼルスをつなぎます。さらに、1885年にサンタフェ鉄道がセントルイスからロサンゼルスをつなぎます。このインフラができることによって、本格的にアメリカが一つの国になっていきます。

 最初にアパラチアとロッキー山脈の絵を出しました(第1話)。次に、どうやってアメリカが北米大陸を全部乗っ取ったのかという絵を出しました(第1話・第2話)。それに続いて今回、上のスライドは3枚目になるのですが、アメリカがどうやって統一したのかを示す、そのときのインフラの絵です。この3枚の絵を覚えておいていただきたいと思います。


●アメリカ帝国主義時代の始まり


 これでアメリカは国内で世界最大の工業国になりますが、その次のフロンティアをカルフォルニアではなく中国に求めます。中国に求めるときに、主要な役割を果たした有名な大統領が、ウィリアム・マッキンリー、セオドア・ルーズベルト、ウッドロウ・ウィルソンです。

 この中で見ていかないといけないこととして、まずマッキンリーはハワイの王朝をつぶして併合してしまいます。それから、スペインに戦争を仕掛けて、フィリピンとプエルトリコを取ってしまいます。さらに、パナマ運河も取り、この頃キューバも保護国にしてしまいます。その後、ウ...
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