明治維新とは~幕末を見る新たな史観
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明治維新を可能にした薩摩と長州の経済力
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(9)長州藩の財政
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、明治維新を可能にしたのは、薩摩藩と長州藩が財政難から回復し、潤沢な経済力を身に付けたからであるという。では長州藩はどのように回復したのか。その戦略とはいかなるものだったのか。(全17話中第9話)
時間:6分13秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年10月30日
≪全文≫

●長州藩の財政


 薩摩藩に対して長州藩はこの時代、どのような状態だったのでしょうか。

 長州藩は関ヶ原の戦いで西軍側についたため、戦いに負けた結果、112万石の領土がわずか30万石まで削減されてしまいました。長州藩はこの苦境を克服するため、江戸時代初めから新田開発を行い、その増収分を藩財政に組み入れました。長州藩の農民たちは努力して「隠し田」をつくりましたが、長州藩ではお目こぼしは一切なく、全て藩の石高にされました。こうした増収により、とうとう幕末には関ヶ原の戦い直後の3倍まで増石しました。そこには血のにじむような努力があったのです。

 しかし先ほど述べた通り、徐々に米中心の経済ではなくなっていきます。長州藩では新田開発だけでは財政は賄えなくなり、その結果、江戸時代後半には長州藩もかなりの借金を抱えました。この借金を立て直したのが、家老の村田清風でした。

 村田はまず、藩士たちの借金を肩代わりし、藩はその借金を37カ年の年賦皆済仕法という方法で清算することとしました。これは、37年の間、毎年借入金の3パーセントを払い続ければ元利完済とする方法です。これは37年払えば111パーセント支払ったことになり、37年で利子が11パーセント、年利にして0.3パーセントです。大幅な金利引き下げであるため、その代わりに藩士の俸禄を引き下げました。

 それだけでなく、村田は下関に私的な税関ともいえる越荷方をつくりました。そこで商人の便宜を図りつつ、手数料を取ることで儲けを得ました。また、別会計の産業振興期間である撫育(ぶいく)局というものをつくり、特産品の発展に注力しました。こうした取り組みの結果、幕末には相当なお金を持てるまでになりました。


●薩摩藩は南北戦争を利用して軍資金を稼いだ


 全国に多くの大名がいましたが、やはり薩摩藩と長州藩が一番財力を有していました。幕末の維新が可能になった経済的な理由は、こうした薩長の力であると言えます。そのうち薩摩藩は、浜崎太平次によって非常に大きな成果が得られました。

 浜崎は、上海などアジア諸国で支店網を張り、現代の商社並みにビジネス情報を収集していました。その中、上海市場で綿花の価格が3~4部に暴騰しているという情報を入手しました。この暴騰は、アメリカの南北戦争が原因です。

 南北戦争は、1861年から65年にかけて奴隷制度を固持する南部と制度...

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