明治維新とは~幕末を見る新たな史観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
吉田松陰の生涯と幕末における彼の影響力
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(11)長州の藩是転換
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
攘夷の波は長州にも押し寄せる。長州もまた、開国方針から攘夷実行へ転換していったのである。これを主導したのは、吉田松陰の弟子である久坂玄瑞であった。今回は、吉田松陰の生涯と幕末における彼の影響力について解説する。(全17話中第11話)
時間:11分07秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年12月6日
≪全文≫

●長州の藩是転換


 こうした流れにより、長井雅楽によって一世を風靡した航海遠略策は非難され、破綻します。吉田松蔭の一番弟子の久坂玄瑞が、公武合体を名目に「長井は外夷との交易の勅許を得ようとする者だ」と批判したのです。長州の開国策は攘夷論の朝廷を誹謗するものだと朝廷からも批判され、長井は遠ざけられることになります。結局彼は、文久2年(1862年)6月に失脚し、翌年2月に切腹しました。

 長州は御前会議で失地回復を図るため、公武合体開国容認から、条約破棄・攘夷実行に路線を転換しました。このように、長州は意見がぐるぐる変わるので、幕末の歴史を分からなくしている要因だと思います。こうした転換の先頭に立っていたのが、吉田松陰の弟子である久坂玄瑞でした。


●吉田松陰の黒船乗船は失敗に終わる


 それでは、吉田松陰とはどんな人物だったのでしょうか。彼は萩藩毛利家の家臣で杉百合之助の次男として生まれました。その後、明倫館の兵学師範になりますが、学問知識に対する意欲の激しさは、狂気のようであったとされています。

 嘉永4年(1851年)には、江戸出府の命を受け、その後、佐久間象山の塾に入塾します。現実を直視する学問に興味を持ちました。

 松陰は水戸、仙台、米沢、会津若松など東北地方諸藩への、流儀修練を目的とする10カ月間の遊歴を許可され、さまざまな思想家に会いに行きました。しかし、出発間際に申請書に欠陥があることが分かり、それを無視して出立を強行すると、脱藩とされてしまいました。結局、それが原因で、吉田家は潰されてしまいます。

 佐久間象山を訪ねた際に、ペリーの2度目の来航のニュースが松陰の耳に入りました。松陰は兵学の師範として他国を知る重要な機会だと感じます。嘉永7年(1854年)2月ごろ江戸湾に来航した後、下田に向かうということで、松陰はそれを追いかけていきます。そして、前日に見つけておいた漁船を無断で漕ぎ出し、アメリカ艦隊に近づいていきました。漁師は警戒して櫓杭を外していたので、ふんどしの帯をいわき付けて漕いでいったのです。

 そうしてミシシッピ号に船をつけますが、ポーハタン号に移されます。漢文の手紙で交渉し、通訳のサムエル・ウィリアムズと議論するのですが、ウィリアム中佐はこの交渉を受け入れませんでした。夜中に海岸へ送り返されたのです。翌日に捕まるのは武士の面目に立たないと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高