明治維新とは~幕末を見る新たな史観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
鳥羽・伏見の戦いが明治維新の大勢を決めた
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(17)幕府の終焉
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
王政復古の大号令を受けて、新政府は倒幕の勢いを強めるが、旧幕府軍の反撃が開始される。鳥羽・伏見の戦いは、明治維新の大勢を決めるものであった。島田晴雄氏は、こうした歴史の事実を確認することが、日本の未来を考える契機になると指摘する。(全17話中第17話)
時間:12分37秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年12月20日
≪全文≫

●小御所会議と慶喜の辞官納地


 王政復古を受けて、慶応3年12月9日(1868年1月3日)夕刻、朝廷で小御所会議が開かれます。もはや封建時代ではないということになったのですが、当時10代の明治天皇、公家衆、諸大名が出席しました。議定である中山忠能が、将軍が大政奉還し将軍職を辞任したので、王政の基礎を固めるためにこの会議を開くのだと、開会を宣言しました。

 公家側からは、慶喜に官位の返上と領地の返納を求めるという議題が出ました。そうすると山内容堂は「慶喜が召されていないのは不公平ではないか」と発言します。そして、「この暴挙をあえてした2~3の公家の意中は何か。幼沖の天子を擁して権力を私しようとする者である」、と岩倉具視を糾弾したのです。

 岩倉は、当時、孝明天皇を毒殺したとまで言われていました。岩倉は「御前でござるぞ。幼き天子を擁してとは何事だ。無礼にもほどがある」と反撃しました。大久保利通はすかさず「辞官納地をして慶喜は誠意を見せることが先決だ」と主張します。ところが、山内は譲らず、大口論となりました。倒幕派はそろそろ一時休憩しようということで、休憩に入りました。

 会議に出席した部下の岩下方平が西郷隆盛に助言を求めます。その西郷が次のように言います。「匕首(あいくち)1本あれば、片付きもんそう。岩倉公によく伝えてくれ」。つまり短刀一本で相手を刺すほどの覚悟があれば、問題は片付くだろう、と言ったのです。この発言が芸州藩から土佐藩に伝言され、そして山内の耳に入りました。再開した会議ではこれを聞き沈黙を守り、終始、岩倉のペースで会議が進み、辞官納地が決定しました。この西郷の一言が決定的だったといわれています。

 新政府は慶喜に対して、辞官納地を要求しました。しかし、新政府内の公議政体派は、慶喜に新政府の参加を求め、倒幕派に反撃します。慶喜は、辞官納地の猶予を求めた上で、わざと衝突を避けるため、大坂城に退去しました。

 そして、平時であれば公議政体派と幕府派の大名がはるかに多数であるため、松平春嶽や山内らの公議政体派は、慶喜の側近と協議して、領地返還の条件を緩和し、慶喜を臨時政府の議定に任命する手順を決めました。これは三職会議でも了承されました。つまり、慶喜の避戦方針で、新政府倒幕派は逆に追い詰められていったのです。


●慶喜、大阪城からの巻き返し


 その時、慶...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎