明治維新とは~幕末を見る新たな史観
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ペリー艦隊の来航に幕府はいかに対応したのか
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(3)ペリー艦隊来航
歴史と社会
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、明治維新を考える上でスタート地点となるのは、ペリー艦隊の来航である。この来航以来、幕府は外交担当の人材登用や軍艦の購入など、開国に向けたさまざまな準備を行っていく。(全17話中第3話)
時間:12分51秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年10月24日
≪全文≫

●ペリー艦隊の第1次来航


 全てはどこから始まったのでしょうか。ペリー艦隊来航です。1853年7月8日、戦艦サスケハナ、ミシシッピ、サラトガ、プリマスというペリー艦隊4隻が東京湾に近づいてきました。

 相模湾を東に進み、昼頃、東京湾の入り口に一時停船します。この時点でマシュー・ペリー提督は、船の大砲に実弾を装填させました。その後、湾の奥に艦隊を進め、午後5時頃、浦賀沖に投錨しました。老中・阿部正弘が艦隊来航を知ったのはその夜です。浦賀から早船による報告が江戸在勤の浦賀奉行・井戸弘道の屋敷に着いたのは午後10時です。井戸はその報告を直ちに阿部の屋敷に持参しました。


●情報収集と幕府の対応


 ペリー艦隊が来るという情報は、実は幕府も掌握していました。なぜかというと、アヘン戦争後の1842年から毎年、オランダが「オランダ別段風説書」を幕府に提出していたからです。この風説書によって、幕府はペリー来航の目的も、武器・装備のことも事前に知っていました。

 そこで浦賀沖に投錨しているサスケハナという旗艦に対し、浦賀奉行与力・中島三郎助は番船をこぎ寄せました。しかし、ペリーの通訳は、高官でなければ交渉しないと言ってきます。それに対して、中島は「冗談じゃない。高官は外国人には会わないのだ」と反論しました。中島は大変立派な人で、その後、長崎海軍伝習所に参加し、造船・航海技術をマスターして、幕末日本の洋式軍制改革の指導者となりました。残念ながら、箱館戦争に参戦した後、五稜郭で戦死しました。

 阿部老中は、幕閣で議論しました。国書を受け取るということは、開国するということで鎖国の国禁を犯すことになるからです。しかし、この禁を「犯すは遺憾なれども、軽率にこれを拒絶し兵端を開き、国家を危機に陥れるはわが国の長計にあらず」ということで、幕閣の間で国書を受け取る決定をし、浦賀奉行には、書簡を浦賀で受け取れと指示しました。そうして、浦賀奉行・井戸石見守弘道、戸田伊豆守氏栄が9日に久里浜の陣屋で大統領の国書を受け取りました。国書を渡したペリーは目的を達したので、「条約締結のため、来年4月か5月に再訪問する」と言い残して去っていきました。

 幕府はたくさんの情報源から、この情報も手に入っていました。例えば、第2次ペリー来航で交渉団のトップに立つ林大学頭が編纂した全345巻の『通航一覧』や蕃書調所(後...

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