明治維新とは~幕末を見る新たな史観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
新体制樹立のためのクーデター、王政復古の大号令
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(16)大政奉還と王政復古
歴史と社会
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
坂本龍馬と後藤象二郎の間で議論された政治綱領がきっかけとなり、大政奉還への動きが進められていく。しかし、大政奉還後、新政府の構想を練っていたのは将軍の職を辞した慶喜だった。こうした中、どのようにして王政復古の大号令が成されていったのか。(全17話中第16話)
時間:8分28秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年12月18日
≪全文≫

●薩土盟約と土佐藩の大政奉還建白


 そうして、大団円に近づいていきます。慶応3年(1867年)、坂本龍馬と後藤象二郎が土佐の藩船夕顔丸で長崎から兵庫へ向かいました。京都では、慶喜および四侯会議が開催中です。後藤は、土佐藩主の父である山内容堂にこの会議に呼ばれていました。

 この船内では、龍馬が新たな政治綱領を後藤に提示しました。1、大政奉還、2、議会開設(万機公儀に決す)、3、官制改革(有為・有力人材に官爵に付け、無実の官を除く)、4、条約改正、5、憲法制定(無窮の大典選定)、6、海軍創設、7、陸軍創設、8、通貨政策(外国と平均の法を設ける)です。これが船中八策です。

 これを受け、後藤は土佐幹部や薩摩の小松帯刀に、大政奉還論を提案しました。薩摩は慶喜が大政奉還など拒否するに決まっていると感じ、それを拒否したら倒幕も辞さないと考えていました。しかし、倒幕のための上京出兵と将軍職の廃止を建白書に書く約束を山内が渋ったため、これは実現せず、薩摩と土佐の盟約は解消となります。

 結局、土佐は大政奉還の建白書を単独で慶喜に提出しました。慶喜はそれを受けて同年10月13日、上洛中の40藩の重臣を京都二条城に招集し、大政奉還の諮問を行いました。その結果を、翌日朝廷に提出し、上表の受理を求める。朝廷上層部は困惑しましたが、後藤と小松らの働きかけで、10月15日に、慶喜同席の朝議で勅許がなされました。これにより、慶喜に大政奉還勅許の沙汰書が授与され、大政奉還が成立しました。

 大政奉還が成立したことで、倒幕派は倒幕の名目が消えてしまいました。しかし、上表では、将軍職辞任には触れておらず、将軍は依然として武家の総棟梁であるという地位は揺らぎませんでした。


●倒幕の密勅と慶喜の征夷大将軍辞職


 薩摩の藩論も、武力倒幕で一致していたわけではありませんでした。大久保利通は倒幕反対論を封ずるために、岩倉具視を通じて倒幕の密勅の降下を求めました。

 この密勅は三条実愛邸で薩摩の大久保と長州の広沢真臣に授けられました。「朕はこの賊を討たずして…」という内容です。「賊」とは慶喜のことです。しかし、どうやらこの密勅には天皇の印も何もなく、偽勅ともいえる代物だったようです。

 ところが、この倒幕の密勅を受け取った西郷は、薩摩藩兵3000を率いて4隻の軍艦に分乗し、鹿児島を出発して、京都に向かいました。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
川口淳一郎
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤