明治維新とは~幕末を見る新たな史観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
幕府の経済政策と薩摩藩の財政改革…調所広郷の凄さとは
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(8)幕府と薩摩藩の実情
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、明治維新を理解するための手がかりは、幕府と雄藩の統治構造と財政に関する変化に隠されているという。今回は、雄藩の一つである薩摩藩の財政について解説する。(全17話中第8話)
時間:7分59秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年10月29日
≪全文≫

●徳川幕府の統治機構と経済力


 ここで考えてみたいのは、この徳川時代から幕末までの間に、幕府や雄藩の内部ではどのようなことが起こっていたのかということです。先ほど、徳川は力が弱まっていたため、決定のために周囲の考えを聞かなければならなくなっていたのだという岡崎久彦氏の見解を紹介しました。

 しかし、何がどう弱っていたのでしょうか。また、そのときどうして長州や薩摩は影響力を行使できたのでしょうか。

 江戸時代は、幕府が経済的に必ず有利になるような仕組みが成り立っていました。幕府は400万石の直轄領を持ち、親藩の領地を含めると800万石近くあり、日本の領土の25パーセントを占めていました。また、強大な軍事力を持ち、鉱山を直轄管理し、貨幣の鋳造権を独占していました。さらには、全国の諸大名に命令し土木工事を行わせる天下普請もありました。城郭建設や治水設備の建設は非常に費用がかかるため、こうした普請を諸大名に行わせていたのです。さらには参勤交代もあります。これは1000人ほど連れていくので、諸大名に莫大な費用を負担させることになり、それによって彼らの財政を弱体化させました。

 ところが、江戸時代の後半になるとこのシステムは機能しなくなっていきます。なぜかといえば、商工業が発展していったことで、江戸時代の経済の中心であった米以外のさまざまな産品が流通し始めたからです。

 武家は米を独占していたため、農民から米を年貢として徴収し、経済の中心に君臨していました。ところが、商工業が発展して、米以外の産品が流通していくと、米は経済の中心ではなくなります。武家は米を給料としているため、実質的には給料が減ってしまうのです。こうして、武家も、もちろん大名も財政が悪化していきました。

 幕府はその際、金の含有量を落とした小判に貨幣を改鋳し、それを以前の小判と同価値で流通させ、その差益を得用としました。しかしそれも長くは続きませんでした。武士階級全体も経済力は低下し、苦境に陥りました。そこで、武家の借金を帳消しにするという徳政令を3回も出し、それにより商人の反発が激化しました。その都度、幕府は商人に札差(金貸業者)をさせて、特別融資を行うことで金融不安を防いでいました。

 このような付け焼き刃の対応をしていくうちに、幕府の力が落ちていきました。その原因は、やはり経済でした。米経済の時...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政