明治維新とは~幕末を見る新たな史観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
通商条約の難局を打開した井伊直弼
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(6)条約締結と井伊直弼
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
朝廷の強固な攘夷思想によって難局を迎えていたアメリカとの通商条約締結を前に進めたのは、譜代大名によって担ぎ出された井伊直弼であったと、公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏は指摘する。大老となった井伊は強引ともいえる方法で締結にこぎ着けたが、その代償は大きなものだった。(全17話中第6話)
時間:11分01秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年10月27日
≪全文≫

●難局打開のために、井伊直弼が大老に任命される


 このような難局において、一橋派は慶喜のような優れた者を立てようとしますが、阿部正弘老中が亡くなってしまった中、決め手に欠いています。そこで溜間詰の譜代大名たちが態勢を立て直し、大老として譜代筆頭である井伊直弼を担ぎ出しました。大老という身分は正式ではなく、臨時の最高職で、いわば期間限定の独裁者です。このとき井伊直弼は彦根35万石の藩主だったのですが、この大老に任命されました。

 少しここで、幕閣の構造と組織、そして力関係を整理しておきましょう。大名の格付けは、江戸城では控え室で決められます。まず幕閣に参加している最上級の人たちは大廊下です。将軍が輩出される水戸、尾張、紀州の御三家や、御三家に近い徳川一門や前田家などの親藩がこれに当たります。

 次が大広間に控える人たちです。島津、伊達、細川、黒田、浅野、鍋島、毛利、池田、蜂須賀、山内、上杉などです。皆、戦国時代の名将で、力がありますが、外様です。外様はやはり大大名なので、大広間を控室にするわけです。

 その次に、溜間という部屋があります。ここを控え室とする、その筆頭が井伊です。井伊や酒井、榊原、本多という家康四天王がこれに当たります。彼らの一族は戦国時代に関ヶ原で大活躍をして、自分たちが幕府をつくったのだという自信があります。ただ、石高は非常に小さいものでした。

 その次に帝鑑の間があり、これは行政関係者がいる場所で、阿部はここに所属していました。阿部もここの出身です。主に譜代大名の控室でした。

 重要なのは、江戸政治は、これらのうち溜間と帝鑑の間の譜代大名が独占してきたということです。外様の排除は当然としても、なぜ親藩や御三家が排除されてきたのでしょうか。それは、もし将軍に何かがあれば、御三家は自分のところから将軍を出す可能性があることと関係しています。御三家には権力が転がり込んでくる可能性があるので、実は将軍家の潜在的なライバルなのです。ですから、将軍家は絶対に御三家や親藩には権力を渡しません。徳川吉宗将軍は紀伊で、徳川慶喜が水戸です。江戸時代に15代将軍の中で本家から出ておらず、御三家出身はこのたった2人です。やはり、本家ではないところから将軍が出る可能性があることを、本家はものすごく気にします。

 こうした構造の中で、先ほどのような阿部正弘...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜