明治維新とは~幕末を見る新たな史観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
幕末の大混乱を招いた幕府の戦略ミス
明治維新とは~幕末を見る新たな史観(5)開国と通商条約
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
欧米列強のアジア進出の中で、ペリー来航は実現した。しかし、公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏によれば、その後の通商条約締結に当たって、幕府は幕末の混乱につながる重大な戦略ミスを犯していたと考えられる。それは一体何だったのか。(全17話中第5話)
時間:9分10秒
収録日:2018年7月18日
追加日:2018年10月26日
≪全文≫

●ハリス領事の来日と交渉


 前回お話しした19世紀の世界情勢がある中で、1856年にアメリカ総領事のタウンゼント・ハリスが軍艦サン・ジャシントで下田に来航します。そして1年3カ月後に、徳川家定将軍に謁見を許されます。翌日ハリスは、堀田正睦、川路聖謨、井上清直など、通商を担当していた者たちに話をします。その時に彼は、「アメリカはイギリスと違って武力で他国を侵略することはしない。だから今アメリカと条約を結べ」と迫ります。そして、「軍艦も大砲もみんなアメリカから輸入しろ」、と言ったのです。ハリスとの具体的な条約交渉は、岩瀬忠震、井上と13回にわたり行われました。

 そして1857年の12月に、日米修好通商条約の草案が合意されました。そこでは、横浜、長崎を主要な港として開港し、片務的最恵国条項が入れられました。またこの条約では、アメリカの領事裁判権が認められることとなりました。これが意味するのは、日本に、一般的な法権、つまり裁判権がないということです。また、日本には関税自主権もありません。この条約はとんでもなく不平等な条約であったということです。しかし、力関係でこれを受けざるを得ませんでした。


●老中・阿部正弘の協調路線


 老中は阿部正弘です。阿部はそれまでの老中とは路線が相当異なり、諸大名と協調する路線を行きました。なぜなら、その前の時代である天保の時代に、天保改革が行われ、幕府の力を強めるために諸大名を強く規制しようとしたところ、失敗したからです。そのため、阿部は打って変わって協調路線を取りました。阿部は外様とも良い関係を築こうとし、特に薩摩藩の島津斉彬や水戸藩の徳川斉昭、幕政参与でもある越前藩の松平春嶽(慶永)を相談役にしました。この3人はものすごく頭の良い人たちで、この時代の歴史にいつも登場します。


●後継をめぐる政争


 もう一つ幕府には底流があり、それは将軍後継者という問題です。将軍の多くは早死なため、後継者選びが自ずと重要な問題となりました。この時期には、将軍であった12代将軍の家慶が36歳で急死してしまいます。そうした状況で、阿部の相談相手であった島津や松平、四国の伊達宗城、山内豊信(容堂)などが一橋慶喜を擁立しようとします。

 一橋慶喜は小さい時から天才と言われ、長じてからも何でもこなす天才でした。単なる秀才ではなく、刀も馬も弓も得意で、歌も詠み、歴史...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子