「万葉集」の聖徳太子――語りかける人
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
困難なときにこそ立ち返るべき聖徳太子の理想と古典の知恵
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(6)古典に蓄積された知
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
聖徳太子への憧れは政治にも生かされたが、旅などを通じてその徳に触れ、自分を磨くチャンスも与えてくれる。このような「古典」を知っておくことは、人生を生きていく上で大きな力となる。日本社会全体が困難に当たっている現在こそ、聖徳太子の掲げた理想を振り返ってみることが重要ではないだろうか。(全6話中第6話)
時間:11分39秒
収録日:2021年6月4日
追加日:2021年8月20日
≪全文≫

●「聖徳太子のように生きよう」という志


 どんな会議でも多数決で決め、リーダーは投票によって選ぶ。それが近代民主主義の鉄則です。私は、これは否定しません。しかし、選ばれた人がどのような政治思想を持って政治を行うのかというのも大切なことであり、そこにはその政治家のバックボーンがあるわけです。

 キリスト教社会であればキリスト教というものがある。イスラム教社会にはイスラム教というものがある。日本の場合は、儒教もあれば仏教もあるし、『日本書紀』から学んでもいいでしょう。『古事記』から学んでもいいでしょう。でも、古代社会の場合は、おそらくそれが聖徳太子なのです。

 おそらく孝謙天皇は、道半ばで倒れた人を思った。しかも、それは国のために働いた人ではないか。そういう人たちに食事が与えられず、倒れてしまって野垂れ死に(客死)してしまうというのは国としてもっとも憂うるべきことだ、というのがそこに表れている。私はこれを、(聖徳太子のように生きようという生き方の)、極めていい例だと思っているわけです。


●旅で語られる聖徳太子の話の役割


 そろそろまとめに入りたいのですが、今日の聖徳太子の話はおそらく旅の中で語られます。

「ここは高井田というところで、ちょっと行ったら龍田山だろ。ここ、死んでいる人がいて、聖徳太子が通りかかったらな、歌を詠んだんだよ」

「どういう歌?」

「家にあるならば妻の手を手枕にして寝ているだろうに。ああ、仕事とはいえ、旅先で、こんなところで臥せっている旅人は哀れだな」

「ああ、それはやっぱり慈悲深い心の表れだよな」

 というふうに語っていく。それで、聖徳太子のことがよみがえるわけです。聖徳太子のことがよみがえるだけではなく、そういうことを通じて、私たちが小さき人、弱き人に対してどのように接しなければいけないかということをトレーニングしていく機会にもなっていくわけです。

 「いいことをしなければいけない」「善行を積まなければいけない」と声高に上から言われるよりも、「昔、聖徳太子という人はね」という話のほうに、私は従います。

 さらにいうと、古典を勉強する人というのは、だいたい時代から取り残された人が多いのでしょう(笑)。私もその典型なのだけれども、だいたい世の中の反対側を向いて歩こうとしている人は、古典を勉強している人が多いのではな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子

人気の講義ランキングTOP10
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
「ホメロス叙事詩」を読むために(5)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
納富信留
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
中国春秋戦国時代と始皇帝(7)始皇帝を支えた家臣たち
始皇帝を支えた家臣たち…史実からいかに実像を描いていくか
鶴間和幸
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾